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kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞関連の時事ネタを中心に書評ノートを公開中。小説や実用書、自己啓発本についてもたまにエントリー。

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キャバ嬢の社会学

書評

真面目な大学院生だった筆者が「キャバクラ嬢」を自身の修士論文のテーマとして選択し、自らキャバクラ店のキャストの一員となり、その内情について詳細に解説している。


「性の商品化」システムなるものに興味を持ったことが調査のきっかけになったということだが、キャバ嬢として働く中できっちりフィールドワークを実施している。

 

複数の店舗で働き、キャバクラの歴史、クラブ・ラウンジとの違い、キャスト・客・黒服・店長の関係性などについてまとめ、一冊の修士論文を完成させた筆者には脱帽だ。

 

 ユニークな書名に惹かれて新宿の紀伊國屋書店で衝動的に購入した一冊だったが、自分自身も上司にキャバクラに連れて行ってもらう機会が多く、その舞台裏には興味があった。これまでの経験を踏まえながら、「へーそういうことだったのか」となかなか楽しみながら読み切ることができた。

 

内容抜粋

多くのキャバクラは、「保証時給」または「ポイントスライド時給」によってキャストの時給を決めている。

さて、「保証時給」とはどれだけ成績が悪くても保証される最低ラインの時給のこと。入店したキャストはすべて、保証時給からのスタートとなる。中流店では、これがだいたい2000円台であることが多い。これに対して「ポイントスライド時給」とはキャストの成績(=獲得ポイント数)によって上下する時給の仕組みである。客から指名を受けた場合、キャストには「ポイント」が付与される。

 

クラブでは熟練したホステスの接客によって「男性同士のコミュニケーションを円滑にすること」が最も重視される。常にホステスが客を気遣ってくれるため、男性客は何も考えなくても、心地よい時間を過ごすことができる。キャバクラのようにセット料金が明確でない店も多く、常連客がカウンター越しのママに悩みを聞いてもらうなど、時間の流れがどこかゆったりしている。

素人が多いキャバクラのキャストには、熟練した接客術が求められていない。キャバ嬢にとっては、会話が下手である(天然ぽい、どぎまぎして可愛らしい)ということすらもアピールになる。言い換えれば、彼女たちは「ありのままの魅力」、すなわち若さだけが資源である。

 

L店のキャストは、一人一人が「お友達リスト」と呼ばれるA4のファイルを持っている。キャストはそれに自分が接客した客のメールアドレスや携帯番号、簡単な特徴などを記録することが義務付けられている。店長やマネージャーはこのリストを確認するが、それは彼らが顧客と関係を築く目的からではなく、「キャストがきちんと連絡先を交換しているか(きちんと営業しているか)」を管理するためである。よって店長などの男性スタッフが、顧客と直接コンタクトをとることはほぼない。

 

このマイクコールはL店で「アナウンス」と呼ばれており、いくつかの意味があった。一回目の「⚪︎⚪︎さん、⚪︎⚪︎さん、キャッシャー」は、「⚪︎⚪︎さん、指名交渉や連絡先交換をしましょう」という合図。二回目に同じマイクコールが流れたら、「指名交渉が成立しなかった場合はすぐに戻って来るように」という指示だ。これが聞こえた時点で指名が取れなかった場合は、席を離れてキャッシャー付近の「待機スペース」に戻ってこなければならない。

 

場内指名をもらったあと、その客が次も自分目当てに来店すれば、「本番指名」の客となる。「同伴」した場合も、自動的にこの扱いとなる。本番指名の客が来店してくれると、キャストには場内指名をもらった場合よりも高いポインがつく(同伴した場合はさらに高くなった)

ちなみに営業前には、その日の「客への連絡件数」と「来店予定の客数」をマネージャーに報告しなければならない。

 

出会いはキャバクラでも、その後は店の外でデートしたがる客は多い。外であった方がお金もかからないし、男性スタッフの目もない。キャストたちは、そんな客の思惑を理解したうえで、それでも店にきてもらわなければならない。