宇宙兄弟〜17巻〜
書評
今回のエントリーは漫画の紹介。
「宇宙兄弟」は漫画雑誌「モーニング」で連載され、2012年には、小栗旬・岡田将生らを起用して映画化もされた人気漫画。
ストーリーは、宇宙飛行士の弟を持つ主人公「南波六太」が、一度はあきらめかけた宇宙飛行士という夢に、弟の背中を見つめ、様々な仲間達と出会いながら挑戦していくというもの。主人公だけでなく、各キャラクターそれぞれの個性が際立っており、かつそれに見合ったドラマがある。そんなところが読者を引き込ませる要因の一つになっていると思う。この17巻では、ある人物のサイドストーリーに私は心動かされた。
17巻に至るまでに、六太は宇宙飛行士という自身の夢を既に叶え、月面着陸という新たな目標を目指して試験に奮闘中。それと並行し、物語中では六太の身近にいるある宇宙飛行士が「パニック障害」という精神的な疾病を克服することになる。
物語の中盤で、そのある宇宙飛行士が六太に対し、自身がパニック障害であることを打ち明けるシーンがある。パニック障害(パニック症候群)は英語で”Panic disorder”、略して”PD”と表現されるが、六太は障害の告白を受けた際、”PD”のことを”Pretty Dog”(かわいい犬)と、まぁとんでもない勘違いをしてしまう(笑)。しかしそれがこのストーリーの大きな鍵となる。
やがて、この宇宙飛行士は過酷なテストの中で、”PD”を克服し、再び宇宙飛行士として活動するという希望を次に繋げることができる。
宇宙兄弟には、感動する場面がたくさんあって、読んでいて勇気をもらえる本当によい漫画だと思うが、私がこの17巻に特に思い入れが強いのは、自分自身が”PD”になった経験があるから。
”PD”から抜け出せない宇宙飛行士の苦悩、それと必死に戦う姿、そしてその宇宙飛行士のために六太が取ったさりげない、でもとても思いやりのある言動に、何ヶ月かぶりに漫画を読み返して、少しうるっときてしまった。
内容抜粋
「あとあれだ。タクシーで発作が出たことで不安になってるんだろうけど」
「俺はそれを聞いて逆にちょっと安心したぞ」
「え…何でだよ」
「宇宙服着てるかどうかは発作と関係ないってことだろ?子どもん頃からの”憧れ”だったじゃねーか」
「どうしたんだいお客さん。さっきからニヤニヤして」
「そう?」
「ああ!今日載せた客の中で一番ゴキゲンな様子だハッハー!」
「なあ運転手さん。変なこときくけど…」
「PDって聞いたことあるかい?」
「PD?ああ…パニックのあれだろ?」
「…いや…」
「そっちじゃなくて」
「プリティ・ドッグの方だよ」