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kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

踊り場経済には景気対策ではなく改革を・天津の惨事を徹底究明せよ~日本経済新聞8月18日社説~

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踊り場経済には景気対策ではなく改革を

4~6月の国内総生産GDP)速報値が年率換算で前期比1.6%減となった。3四半期ぶりのマイナス成長は日本経済が一時的に停滞する「踊り場」(景気が上昇する局面で、景気の回復が鈍り、横ばいの状態にあること)の局面に入ったことを示唆する。マイナス成長の主因は、外需および個人消費の落ち込みによるものとされている。

 

・外需の落ち込み

→今年前半の世界貿易は、中国向けを中心に弱含んでおり、その影響が日本経済にも及び外需の低迷を招いたとされている。

個人消費の落ち込み

→6月の長雨による天候不順といった、一時的な要素が大きいと考えられる。

 

一方で、企業収益は過去最高水準という一見矛盾した傾向にある。これは企業の海外部門の収益を指標値の中に含めるか否かの問題。今回実質GDPは前期比マイナスとなったものの、実質GNI(海外からの利子・配当所得などを加えた国民総所得)は前期比年率で2.0%増加している。つまり、日本企業の海外子会社から得た所得をいかに従業員賃金、株主への配当、設備投資に振り向けられるかが課題となっているのだ。

 

現在の日本景気を俯瞰すると、雇用・所得環境の改善は進んでいるし、先行指標である工業生産の予測指数や景気先行指数は上向いているため、先行きを過度に悲観視する必要はない。

 むしろ、マイナス成長に陥りやすい日本経済の体質にこそ問題がある。現状の日本経済の実力である潜在成長率は1%にも満たないという。成長の天井が低いため、国内外でおきた一時的なショックをうまく吸収できず、GDPが減りやすい構造になっているのだ。このため、表題の「踊り場経済」の状況下では、安易な経済対策を打つのではなく、規制改革で経済の新陳代謝を高めたり、法人実効税率を引き下げる道筋を早期に固めて日本の立地競争率を高めなどの対策が求められている。

 

以前のエントリーでは、地方創生のための財源捻出について考えた。国は、行政面での予算繰りを考えながら、これらの景気対策にも先手を打っていかなければならない。難しい状況にあると思う。

 

kaidaten.hatenablog.com

 

 

 

天津の惨事を徹底究明せよ

中国・天津市の港湾部で12日深夜に大きな爆発が起き、多数の犠牲者が出た。現場には毒性の高いシアン化ナトリウムが残っている状態で、事態の収束の目処はたっていないという。

世界有数の天津港が機能不全に陥ることは、経済に深刻な影響を与える。かつての日本も、貿易港としての機能を近隣のアジア諸外国に取られるかたちとなり、外需を大幅に低減させた。今回の事故により、各国からの中国港湾に対する信頼は低下したであろう。すなわち、今回の天津港の事故は、今後のアジア近隣の流通経路を大きく変えることにもなりかねない深刻な大事故なのだ。

 

そしてもう一点。今回の事故により中国当局の行政面の怠慢が浮き彫りになった。

天津港の爆発は大きく2回に分けて起こっている。注目すべきは、2度目の爆発。これは駆けつけた消防隊の消火活動が引き起こしたとの見方が強まっている。爆発した倉庫が保管していたシアン化ナトリウムは水と反応して引火性の有毒ガスを発生させる化学物質。このため、放水が被害を甚大にさせた可能性が濃厚とされる。

消防当局の指揮に問題があったことはもちろんだが、住宅街の近くに危険物質を貯蔵した倉庫の建設を許した中国行政の甘さ・怠慢さにも憤りを感じる。2011年温州市鉄道衝突脱線事故では、事故を隠蔽する目的で、脱線した車両を地中に埋め立てるとういう信じられない行為が表沙汰になり、当局の体制の是非が大きく問われた。

中国は、安全や法令順守に対する考え方を改め、その体制を根本的に見直す必要があるだろう。