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日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

中国発の市場動揺に惑わされないこと~日本経済新聞8月27日社説~

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中国発の市場動揺に警戒怠るな

日経新聞社説シリーズ。8月27日の社説「中国発の市場動揺に警戒怠るな」が題材。

 

世界的に株価の乱高下が続いている。中国人民元の切り下げによって中国経済の不透明感が強まったことが直接の原因だ。

 

それに米国の利上げ観測を背景とした新興国からの資金流出が加わり、株式などの高リスク資産が世界的に手控えられている。日経平均株価が2万円を下回るなど、日本にもその影響が波及している。

 

説明力問われる習政権

市場関係者が懸念するのは、中国の経済運営への信頼が揺らいでいることだ。

 

人民銀は、「政策金利引き下げ」や「預金準備率引き下げ」等の実施に踏み切ったが、対応が後手に回った感は否めない。

 

また、中国の経済統計については、その実態を反映できていないとの指摘が少なくない。年率7%前後という政府の成長目標に縛られ、機動的な金融政策が難しくなっている懸念がある。習政権指導部は、この成長目標への過度のこだわりから脱却する必要がある。

 

中国へのもう一つの懸念

共産党政権と市場との意思疎通が円滑ではないことも問題だ。

 

人民銀は、8月11日、人民元の米ドルとの交換レートの目安である「基準値」の算出法を変更し、切り下げに踏み切った。

 

人民元は米ドルに連動していたので、算出方法変更が「市場化」に向けた改革の一環だとする説明には妥当な側面がある。しかし、説明はWEBサイトや国営メディアを通じた一方的なもので、国民に対して丁寧な説明が行われたとは言い難い。

 

結果として、中国の実体経済への不安がさらに募るかたちとなった。共産党政権は市場の反応にもう少し注意深くなる必要があるだろう。

 

 

 

日本が取るべき行動

このような状況において日本が取るべき行動は、中国市場の動向に過度に振り回されず、今やるべき成長戦略を地道に推し進めることだろう。

 

日本の懸念事項は、投資家のリスク回避の傾向が強まった場合、安全資産とされる円が買われて高くなることだ。これは日本企業の輸出力低下や、円建ての収益の下振れに繋がる危険がある。また、株価下落は、個人投資家の資産目減りを通じて消費者を下押しする「逆資産効果」を生む可能性もある。


ただ、上記のような懸念はあるものの、日本経済の先行きを過度に悲観する必要はない。4~6月期の実質経済成長率はマイナスに陥ったものの、企業収益は過去最高水準を記録し、景気回復の基調は崩れていない。(※以下エントリー参照)

 

kaidaten.hatenablog.com

 

この状況で大切なことは、「アベノミクス」の第三の矢である成長戦略を加速させることだ。岩盤規制(※1)の改革や、環太平洋経済連携協定(TPP)などの交渉を遅滞なく進め、日本経済の潜在成長率を引き上げる環境を整える。

 

(※1 役所や業界団体などが改革に強く反対し、緩和や撤廃が容易にできない規制のこと。既得権益を持つ関係者の強い反対にあって問題の解決が後回しにされた、医療・農業・教育・雇用などの分野にみられる)

 

加えて、日系企業も独自に収益力を高めるための成長戦略・改革を進める必要がある。幸い、最近は生保業界を中心に海外へのM&Aが積極的に進められており、よい傾向が見られる。今日の短期相場変動に惑わされることなく、地に足をつけた改革をこのまま進めていくべきだ。