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kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞関連の時事ネタを中心に書評ノートを公開中。小説や実用書、自己啓発本についてもたまにエントリー。

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薬局改革には「かかりつけ強化」ではなく「患者と薬剤師の意識改革」が必要~日本経済新聞8月28日社説~

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薬局改革に物申す!

日経新聞社説シリーズ8月28日版は、社説「薬局の機能を高め医療の効率化進めよ」を題材とする。

 

今回は、厚生省が進めようとしている政策に個人的に大きな疑問を感じたので、政策の狙いと現状との乖離、私が考える本当に必要な改革について解説してみようと思う。

 

 

 

薬局・薬剤師のあり方

薬局や薬剤師のあり方が問われている。どのようなかたちで患者の役に立っているかがわかりにくいという声が強い。医療の質・安全性の向上や医療費抑制などの役割をきちんと担えるよう、制度の見直しが求められている。

 

薬局の本来の役割と現状

一般的に、患者が病院や診療所にかかったとき、薬については医師が書いた処方箋を外の薬局に持ち込んで受け取る。これを「医薬分業」という。薬の専門家である薬剤師が、処方内容が適切かをチェックすることを目的としている。

しかし、実際には飲みきれないほどの多種多量の薬を処方し逆に患者の病状を悪化させてしまったりする事例が頻発しているとのこと。「処方箋通りに薬を出しているだけ」と見られても仕方がない状況となっている。

 

厚労省が進める薬局改革〜かかりつけ強化〜

このような背景を踏まえ、薬局改革が必要との認識が高まっており、現在厚生労働省が進めている改革が「かかりつけ」機能の強化。政策の具体的な方向性は、患者がいつも利用する薬局を一つに絞り「かかりつけ」薬局を決める体制を整えるというもの。患者が複数の医療機関を受診している場合でも、「かかりつけ」薬局に各医療機関が出す処方箋を持ち込むようにすれば、患者の服用薬の全体像を把握できるし、医師と相談しながら薬の種類や量を調整する作業がしやすい。これにより、「医療の質・安全性の向上に寄与する」という薬局本来の役割を担うことが可能になる、とのこと。

 

「かかりつけ」強化に感じる課題・疑問

が、個人的に、厚労省が進めようとしている「かかりつけ」強化の政策には疑問を感じてしまう。自分自身、複数の医療機関を受診した経験があるが、病院の近くには「その病院選任」とも呼べるような処方箋薬局があり、そこで薬を処方してもらうことが大半だ。「なんで、薬もらうのってこんなにまどろっこしいんだろう?」と率直思い、調べた結果、「医薬分業」の知識を得ることになった。
記事でも指摘されているように、現在の薬局の体制が「医薬分業」の本来の役割を担えているかと言われると、確かにグレーなところだと思う。私の経験上、医師からの処方箋内容を薬剤師が指摘し、窓口で薬の種類や量を変更したことはこれまで一度もない。薬剤師によるチェックが十分に機能しいてるとは言い切れない部分も確かにあるだろう。そもそも最近まで、処方箋薬局とは「医師の処方通りに薬を患者に提供するところ」だと思っていた。そういう意味で、今回話題となっている薬局改革の理念には共感できる。ただ、「かかりつけ」強化という方向性はいかがなものだろうか。率直に疑問に感じる部分がいくつかある。

 

■単純にまどろっこしい

まず第一にまどろっこしい!
複数の医療機関を受診している場合、病院間が地理的に離れていることは往々にしてあるだろう。その場合、例えば、ある一つの病院の近くの処方箋薬局を「かかりつけ」薬局としたとする。問題は別の医療機関を受診した場合だ。目の前に”その病院選任”で、関連するジェネリック医薬品(後発品)も豊富に完備した薬局があるにも関わらず、わざわざ「かかりつけ薬局」に足を運ぶだろうか?私ならそんなまどろっこしいことはしないと思う。

 

■人気薬局への患者集中化の懸念

上記の例から分かるように、患者にとって物理的距離の問題は大きい。この大前提のもと「かかりつけ」薬局を選定するなら、必然的に駅から近くてアクセスのよい中心街の薬局が「かかりつけ」薬局として選ばれやすくなるだろう。
また、営業時間についても、「かかりつけ」薬局を選ぶ上で重要なポイントとなる。以前、仕事帰りに病院にかかったことがある。治療後、すぐに近くの薬局に寄ろうとしたところ、営業時間外で薬を受け取れなかった経験がある。薬局によって営業時間は大きく異なる。平日のみ営業で18:00に営業終了する処方箋薬局もあれば、土日営業有りで21:00頃まで営業している薬局もある。社会人の我々にとって、遅くまで営業している処方箋薬局の存在は有難い。言い換えれば、遅くまで営業している薬局に「かかりつけ」人気が集まりやすい傾向があるはずだ。
以上のような点を踏まえると、アクセスがよく、営業時間が長い薬局が必然的に「かかりつけ」薬局として人気を集めることになる。これが極論であることは承知しているが、もしそのような潮流が生まれた場合、「かかりつけ」が集中した薬局では、キャパシティオーバーできめ細やかなサービスを提供できない可能性があるし、逆に客足が減った薬局は、これまでの営業スタイルを大幅に変更することを余儀なくされるだろう。

 

■「かかりつけ強化」よりも「患者と薬剤師の意識改革」が必要

以上のような懸念があり、私は「かかりつけ強化」といった大掛かりな政策に疑問を感じる。それより必要なことは、もっと身近な「患者と薬剤師の意識改革」だと私は考える。


・患者の意識改革とは?
日経の社説では、複数の医療機関を受診している場合、患者の服用薬の全体像が把握できないと書いているが、その問題は薬局で発行してもらえる「おくすり手帳」を持参することで容易に解決できるはずだ。「おくすり手帳」とは、患者個人の処方履歴を記録するための手帳で、全国の処方箋薬局共通で無料で発行してもらえる。私もお薬手帳を持っているが、初診の際、医師に最初に見せると重宝される。医師と患者のコミュニケーションツールとしても有効だ。薬局でも、これまでの処方履歴を見て飲み合わせの問題に配慮した上で薬を処方してくれるし、ジェネリック医薬品を希望する際は、使用経験のあるメーカーのものを優先的に提供してくれたりする。この手帳は患者にとって本当に役に立つ代物だ。つまり、厚生省が指摘している現在の問題を根本的に解決するには、まず患者自身が自分の処方履歴を管理できる「おくすり手帳」を持ち、医療機関に持参する意識改革の方が必要だと思う。

 

「お薬手帳」活用のススメ|処方せんをもらったら|日本調剤

お薬手帳の例 ↓

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・薬剤師の意識改革とは?
薬局側も、まずは患者に対して「おくすり手帳」を発行・持参することを啓発すべきだろう。この手帳の普及が、医療の質・安全性の向上に寄与することは言うまでもない。
加えて、医師の処方内容に対するチェック体制も強化すべきだ。患者側の視点から指摘させてもらうと、これまで出会った多くの薬剤師は、患者とのコミュニケーションが十分に取れていなかったように思う。医師による”診断”とまでは言わないが、薬剤師の視点で、患者からの情報提供を促す努力がもう少しあってもよいのではないだろうか。また、処方内容にもし問題があった場合に備えて、医療機関への連絡の手筈をきちんとマニュアル化し、作業上の障壁にならないようにしておくことも必要だろう。現状、薬剤師が医師の処方に対して、”もの申せる”体制が整えられている感じはしない。
行政には、表題のような大掛かりでコストのかかる改革を推進するのではなく、上記のような患者・薬剤師の意識改革を進めるために、各医療機関・薬局に地道に働きかけを行ってほしいと思う。