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日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

不適切会計に隠された東芝の真の姿~日本経済新聞9月8日社説~

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東芝の不適切会計の真実は?

経新聞社説シリーズ9月8日版は、社説「東芝問題を日本市場の不信につなげるな」を題材とする。東芝問題は以前にも取り上げたことがあるが、今回はまた違った切り口でこの問題について考えてみる。

 

社説要約

会計不祥事に揺れる東芝が2015年3月期決算を発表した。最終損益は前の期の602億円の黒字から378億円の赤字へと転落した。過去の利益の水増し分の修正に伴い、事業資産の減損などに迫られたというのが赤字転落の大まかな構図。東芝は過去7年間に遡り、決算内容を見直した。この作業に時間を要したため、前期決算の発表はおよそ4ヵ月も遅れてしまった。株式市場の不透明さを増す懸念もぬぐえず、きわめて残念である。

 

 

 

■日本市場に与える影響

知名度が高い東芝への評価は、日本の株式市場全体への国際的評価にも影響してしまう。東芝問題を日本不信につなげてはならない。東芝は決算発表にあわせ、社外取締役の増員やトップダウン型の予算策定方式の見直しなど、不祥事の再発防止策も発表した。しかしながら内容には抽象論が多く、現段階で具体的な再発防止策が打ち出せているとは思えない。

 

■競争力の立て直しが急務

競争力の立て直しも急務だ。不適切会計の修正を通じて、半導体やパソコンといった主力事業の構造的な低収益が明らかになった。こうした事業は、利益の水増しによってリストラが先延ばしになってきた面が否めない。東芝は残すべき事業と縮小・撤退すべき事業を見きわめたうえで、再建計画を早期に打ち出し、軌道に乗せる必要がある。構造改革には人員の削減や資産再評価に伴う損失が発生するだろう。資本基盤も固めるためにファンドの出資を仰ぐことも必要かもしれない。

また、市場の監督や運営を担う組織の役割も重要だ。東京証券取引所は投資家保護の観点から、東芝企業統治や内部統制の改善に向け同社を指導する責任がある。

 

今後東芝に求められるもの

連日メディアを賑わす東芝問題。日本の旧来的な隠蔽体質が表面化した不祥事と言えるだろう。かつて、日立製作所富士通と並び「家電御三家」とまで称された東芝。その凋落ぶりは見るに耐えない。他の2企業との間に大きな差が生まれてしまった。
社説にあるように、東芝の不採算事業の問題はかなり深刻だ。利益の水増しによって隠蔽されてきたが、今まさにシャープが陥っている悪循環に同社も巻き込まれる構図となっている。以前、日立とシャープの明暗を分けた「経営モデル改革」について取り上げたことがある。

 

kaidaten.hatenablog.com

 

「日立が不採算事業を切り捨て大胆な構造改革を図り、その後業績を伸ばしたのに対し、シャープは現在も”ゾンビ事業”を抱えて身動きが取れなくなっている」という内容だ。これは東芝にもそのまま当てはまるだろう。地に落ちた信頼を回復させながら、事業を再編し、前に進んでいくことには大きな痛みが伴う。それでも日本を代表する”一流”企業の一社として、何としてもこの状況を打開し、日本市場全体の信頼の回復に繋げてほしい。今回の件を発端に、今後同様の不祥事が明るみになるかもしれない。旧体制から抜け出せない多くの大企業は、今こそ改革を推し進めるときだ。