kaidaten's blog~書評ノート~

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マイナンバーを利用した消費税減税 新たな方針と課題~日本経済新聞9月9日一面・三面~

 

消費税減税 新たな方針発表

9月9日の日経新聞の一面および三面で、前回に引き続き「マイナンバー制度を利用した消費税減税」が取り上げられていた。税還付を世帯で合算できる等、新たな情報が追加されており、付随する課題についても言及されている。本エントリーでは、その内容をかいつまんで紹介し、消費税減税について改めて考えてみよう。

(以前のエントリーはこちら↓)

kaidaten.hatenablog.com

 

日経一面「消費税還付世帯で合算」・三面「消費税減税、調整難航も」要約

消費税率を10%に引き上げる際に導入される負担軽減策で、「税額を減らすための還付金が世帯単位で合算できる」ことが分かった。消費税10%分を支払った後に2%分が還付される。1人当たり年4000円かそれを超える水準の上限を設けるが、上限額を家族で合算すれば世帯ごとの納税額を抑えられる仕組みだ。ただ、個人番号カード(マイナンバー管理用)を用いた手続きの煩雑さや、小売店のシステム対応問題など、課題は山積み。2017年度の制度導入へ、政府・与党は今年末にかけ詳細を詰める予定だが、党内でも異論が飛び交っている。

 

■減税還付と世帯合算の仕組み

世帯合算の仕組みについて簡単に説明しよう。仮に還付額の上限が4000円だとしよう。この場合国民1人につき年22万円程度までの飲料料品(酒類除く)の購入について、負担軽減の適用が受けられることになる。適用を受けるにはICチップ付きの個人番号カードが必要となり、個人番号カードを店頭の読み取り機にかざして個人認証する。軽減分(消費税10%のうち2%)はポイントの形で政府のサーバーに蓄積。購入品目などの詳細はシステムに残らず、ポイントだけを税務署が把握できる仕組みだ。PCやスマホからマイナンバーの関連サイトに入り申請することで還付を受け取ることができる(以下図参照)。

 

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そして今回、新たに追加された制度が「世帯による限度額合算」。限度額は世帯単位で合算できるので、申請すれば世帯で上限枠を合算できることになる。例えば、夫婦と子ども1人の世帯の場合は、世帯あたりの上限額は1万2千円になる。年間66万円程度が減税対象となる計算だ。

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軽減対象になる品目の詳細な線引きは年末に決める方針。食品表示法の適用を受ける飲食料品は対象になるが、医薬部外品などは外れる方向だ。以下の図は現状の方針に沿って対象・非対象商品をわかりやすく分別したもの。

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■欧州との違い

政府案は「日本型軽減税率制度」と銘打つが、欧州の付加価値税(消費税に相当)で導入している軽減税率とは制度の立て付けが異なる。政府案は店頭でいったん10%分の消費税を払い、後で一部を還付してもらう仕組み。欧州の軽減税率は買い物をする時点で低い税率が適用される。詳しくは以下の図を参照してほしい。

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■逆進性に考慮しているが、本当に痛税感緩和に繋がるか?

ただ、店頭の税率は変わらないので消費者の「痛税感がやわらぐのか」については疑問が残る。消費税増税低所得者ほどインパクトを受ける。この「逆進性」を考慮した上で、与党はこれまで消費税率の10%引き上げ時の軽減税率導入を目指してきた。そして今回の制度導入を検討するに至ったわけだが、後日還付の場合、国民が感じる痛税感を払拭しにくいと考えられる。なぜなら、軽減対象の品目でも買い物時には「いったん10%分の消費税を支払う」ためだ。麻生財務相も「買った時点の痛税感が減じないという指摘はあっている」と認めている。これを考慮した上で、政府はポイント付与方式でたまった軽減税額を年に数回受け取れるような仕組みを検討中とのことだ。お金が必要な時に引き出せれば痛税感の緩和につながるとみているが、具体的な制度設計は道半ば。
また、常にカードを持ち歩く必要があり、カードを忘れたときの対応も不明確。還付を受ける申請時にIT機器に不慣れな高齢者が適切に対応できるかについても問題視されている。消費者が抱く「買い物の中身を監視されている」といった不安感も完全に拭いさつことはできないだろう。

 

■小売店でもカードリーダー端末が必要に

一方で、小売店や外食点は消費者のマイナンバー情報を読み取る機器が必要になる。大手のスーパーやコンビにではカードリーダーの設置が進み、多少のシステム修正で可能になる見通しだ。しかしながら、対応していない店は小型の端末を置く必要が出てくる。財務省内では「一台当たり一万円程度で出来る可能性があり、配ってもいい」との声もある。ただ財源の確保が必要だ。高齢でインターネットに不慣れな個人商店の店主などが使いこなせるかなどの不安も残る。

 

■ネット販売への対応は?

ネット販売についても課題が残る。財務省はネットで購入する場合も対象にする方針だが、番号カードをどう読み取るかが不透明。代金引換なら宅配業者がリーダー端末を持ち歩けば済むが、自宅でクレジットカード決済する場合などのカード読み取りをどうするかは方向性が出ていない。海外からネット購入する場合の対応も課題になる。

 

感想

今回のエントリーの内容で、消費税減税の仕組みが大方明らかになった。記事でも書かれているように個人番号カードの普及にはそれなりの時間を要するだろう。普段利用している個人経営のお店に個人番号カード専用の読み取り機器が設置されている状況をなかなか想像できない。制度発足から最終的にどのようなかたちで落ち着くことになるのか気になる。また、以前のエントリーと重複して申し訳ないが、やはりセキュリティー面のリスクが怖い。マイナンバーを管理する個人番号カードは、もはやパスポートに近い代物だと思う。制度が解禁されれば、必ず悪用する者、組織が発生するだろう。
そして、コスト面。記事ではそれほど言及されていなかったが、今回取り上げられている後日還付制度の導入には、行政側に相当な負担がかかると考えられる。システム面の話はもちろんだが、おそらく各地で何らかのトラブルが頻発するはずだ。国はこの問題にどのように対応していくのだろうか。

ちなみに、全国のレジで待ち行列長くなりそうですね。