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日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

コウノドリ先生もびっくり!お腹の中の胎児の学習〜日経サイエンス2015年10月号〜

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赤ちゃんは生まれてくるまでに多くのことをお腹の中で学習している

ドラマ化されて一気に有名になった漫画「コウノドリ」。産婦人科を舞台に"出産現場"を取り巻く様々な問題を物語の中で取り上げている。一人の赤ちゃんがこの世に生まれてくることがどれだけ尊いことなのか、この漫画を読み進める中で読者は気付く。主人公「鴻鳥(こうのとり)サクラ」医師の「ようこそ、この世界へ。生まれてきて、おめでとう。」のセリフには多くの意味が込められている。

 

さて、本エントリーでは、そんなサクラ先生もびっくりな「お腹の中の胎児の学習」について取り上げてみよう。紹介する記事は日経サイエンス2015年10月号「発生生物学〜胎児の学習〜」。胎児は母親のお腹の中で本当に多くのことを学んでいる。実に興味深かったので読者の皆さんと共有したいと思い今回エントリーした。 

 

単語の聞き取りから食べ物の好みまで!胎児の学習プロセス

新生児は旧来のイメージに反して、知識と経験を欠いた”白紙状態”とは程遠い。近年の研究によって、胎児の知覚認識と学習が子宮のなかで始まっていることがますます明確になった。

 

ここ数年、従来のぼやけた2次元超音波画像よりもはるかに鮮明で本物そっくりの3次元画像と4次元動画によって、胎児の生理と行動が詳しくわかるようになった。非侵襲的な装置によって、胎児や新生児の発達中の脳の電気的活動を測定することもできる。

 

そうした手段によって、胎児が生まれるはるか前からその芽生え始めたばかりの脳と感覚を用いて自分自身と外の世界について学習している様子が描き出された。

 

薄明かりや親しい静かな声、母子間の安らかな肌のふれあいのメリットが示唆されており、早産児のケア改善に役立っているとのこと。そんな胎児の学習プロセスを、以下紹介していこう。

 

 

 

触覚

まずは触覚。胎児は受精から7週間後には早くも動き出す。成長につれ、へその緒をゆらし、羊膜嚢(ようまくのう)の壁をよじ登り、手を口にくっつける。多くはぎこちない動きだが、24週までにはこうした動きを意図的に行うようになることが最近の研究で示唆された。例えば口を開けてから手をそこへもっていく。さらに成長するにつれ、こうした協調運動が発展する。

 

味覚と嗅覚

次に味覚と嗅覚。15週目までに味覚が形成される。24週くらいには鼻の嗅覚細胞も働き出す。過去10年の研究から、新生児は子宮の中で慣れ親しんだにおい(例えばニンニクやアニス、ニンジンのにおい)を好むことが示された。また過去2年間のラットでの研究では、母親が食べた食物が胎児の脳に不健康な味覚を形成する可能性が示唆されたジャンクフードを与えた母マウスから生まれた子マウスはジャンクフードを欲しがる傾向が示された。

 

聴覚と言語

そして聴覚と言語。胎児は24週から27週の間に音が聞こえるようになる。胎児が母国語のリズムやイントネーションなど一般的な特徴を学習していることは2005年頃から知られているが、個別の単語や音節も聞き取っていることが2013年の2つの研究によって確認された。うち一つの研究では、胎児に3音節の意味のない単語をいくつか繰り返し聞かせた。誕生後にそれらの単語を聞くと、新生児の脳はこれを認識する活動を示した。胎内でこれらの単語を聞かなかった新生児の場合はそうした脳活動は生じなかった。

 

視覚

最後に視覚。すべての感覚のなかで、視覚は成熟に最も長い時間がかかる。胎児の目が開くのは28週目。この段階で何が見えるのか、そもそも見えているのか研究者の間で議論となっている。しかし最近の動物実験で得られた経験から、子宮を透過して外から入ってくる光が目の成長に不可欠であることが示唆された。光がないと、マウス胎児の目に神経細胞と血管が過剰に成長して、有害な圧力が高まる。

 

赤ちゃんのために周りの大人は配慮しよう

胎児がどれだけ母親から影響を受けているかご理解いただけただろう。普段何気なく使う言葉、口にする食べ物に加えて、においまでもがしっかりと赤ちゃんには伝わっている。妊婦さんには、遺伝子レベルの”母性”が備わっているので、お腹の中の赤ちゃんのことを最優先して行動できるようになる。

 

それはそれで素晴らしいこととして、私は、旦那さんをはじめとした周りの人々の妊婦さんへの気配りもとても重要だと思う。妊婦さんへの思いやりの言動は、そのまま生まれてくる新たな命に良い影響を与えるからだ。もし街中で妊婦さんに出会うことがあったら、出来る限りの配慮をしてあげてほしい。

 

意外と認知度が低いので、当エントリーで紹介しておくが、妊婦さんの多くはマタニティーマークというホルダーを身につけている。このホルダーを付けている人のお腹の中には大切な命が宿っている。特に、お腹が大きくない内はその女性が妊婦さんであることに気付きにくい。が、実はその時期がつわりが一番ひどい期間だったりする。マタニティーマークの存在に気付いた人は、どうか優しい態度で妊婦さんに接してあげてほしい。 

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今日も多くの奇跡の命がこの世界にやってくる。ようこそ、この世界へ。生まれてきて、おめでとう!

 

追記

2018年3月に第一子が誕生して幸せな生活を送っている。気のせいなのかもしれないが、お腹の中にいるときによく歌っていた音楽を流すと、すっと泣き止むことがある。胎児の学習に関する研究はまだまだ発展途上だが、確実にいえることは、赤ちゃんはお母さんのお腹の中で色々なことを感じ、記憶しているということだ。

 

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