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日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

TPPの追い風 日本企業のアジア進出動向まとめ〜日本経済新聞10月23日〜

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日本企業に吹くTPPの追い風とは?

以前のエントリーで、TPPの主要項目の各国合意内容と貿易関係図を紹介した。今回は、日系企業のアジア対外進出を焦点を据え、TPPへの加入が日本にとってどのような「追い風」となるのか考えてみる。対象の日経記事は、10月23日「アジア展開追い風 TPP ビジネスに新秩序」。

 

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日経記事要約

環太平洋経済連携協定(TPP)が発効すれば、アジア太平洋地域のビジネスルールが広範囲で統一される。日本企業のビジネス機会は大きく広がり、新興国に進出しやすくなる。金融や小売などの分野でも新事業の展開が期待できる。巨大経済圏で日本企業がさらに成長し、日本経済の本格再生につなげられるかが問われる。

 

日本企業 飛躍へ好機

TPPの本質は、世界のGDPの4割弱という世界最大の経済圏のなかで、カネ、サービス、情報、人が自由に行き来しやすくなることだ電子商取引、競争政策、労働、環境といった規定は、全世界共通世界貿易機関(WTO)協定にない先端的な内容だ。実質的なルールといわれる理由はここにある。「日本の公的医療保険である国民皆保険制度が崩壊する」「日本の食の安全が脅かされる」といった懸念も杞憂に終わったといっていい。ルール分野の合意のほとんどは日本企業に恩恵を与えるものだ。

専門家の試算によると、TPPは日本のGDPを2%分押し上げるという。「国境を越えた人材の交流で技術革新が促進される。名目GDP600兆円も達成できる」との期待もある。大事なのは、中小企業がTPPをいかし、「攻め」の姿勢で果敢に新たな市場やビジネスに挑むことだ。縮み思考から抜け出し、収益力や生産性を大きく高めるまたとない機会だ。

 

外食・製薬など歓迎

TPP12カ国の投資ルールが整うことに企業の期待は大きい(詳しくは下図参照)。 

 

 

 

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マレーシアやベトナムといったアジアの新興国では外資規制が緩和され、日本のコンビニエンスストア各社、金融機関、電力会社などが本学的にサービスを展開しやすくなる。アジア圏では外資の小売業進出を規制する国は多かったが、可能性が広がる。
知的財産ルール整備にも期待が集まる。新薬の保護期間延長は日本に直接的な影響はないが、日本の製薬会社からは「隣国の中国の後発薬メーカーが急速に育ちつつあるため、保護が必要になる可能性は高く、TPPの間接的な効果を期待したい」との声も出ている。日本の建設会社はベトナム、マレーシア、ブルネイで国や自治体の公共事業が受注可能になる。ただ建築基準に関する独自の法律が残る可能性があるほか、現地の商慣習の壁もある。TPP発効に合わせて各国がどのように法改正を進めるかはまだ不透明だ。

 

専門家の見方

岩田伸人・青山学院大学WTO研究センター所長

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マレーシアやベトナム外資規制が緩和されることは、日本のコンビニやスーパーにとって追い風になるだろう。マレーシアは日系企業を含めた外資による現地コンビニへの出資を解禁し、ベトナムも厳しい出店審査を廃止する。日本の小売店が一段と攻勢を掛ける好機だ。農産品を日系小売店に供給している国内の農家や農業法人も小売店網の拡大によって恩恵を受ける。現地産の安い農産品を使うのではないかとの懸念もあるが、日本の農産物や食品は高品質・安全だと人気が高い。人口減で国内の消費量が減るなか、経済成長で需要増が見込める海外市場を目指す流れは加速するだろう。

 

永浜利広・第一生命経済研究所主席エコノミスト

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今回のTPP合意で参加国の政府機関が関わる公共事業の入札が外国企業に解放された。アジアなどの新興国公共事業に日本企業が参加しやすくなる。日本が掲げるインフラ輸出戦略に大きな意味がある。アジアに新興国では、エネルギーや通信などの重要インフラ事業で国有企業の存在感も大きかった。国有企業への優遇措置の縮小が決まったことも日本勢には追い風になる。TPP域内では、ビジネスチャンス関係者が滞在しやすくなり、税関の手続きなども簡素化される。ヒトやモノの流れが活発になることで、ビジネス環境の平準化がさらに進むのではないか。

 

感想

日本企業を取り巻くTPP事情は上記で紹介した通り。一つ意外だったのが、農家や農業法人にとってもTPPが追い風になるとする岩田所長の主張だ。この部分は少なくとも断言できない部分がある。制度導入後、どのような働きを示すのか注意深く観察し、国は慎重に舵取りしていかなければならない。TPP交渉はほとんど合意したということだが、それでも各国が具体的にどのような法改定を行っていくのかは不透明な部分がある。政府も法人減税や規制改革などで対日投資を促す環境をしっかりと整える必要がある。とにかく、これだけ大規模な協定に参加するわけだから、「追い風」だけでは決してないはず。気を引き締めて外交を進めていかなければならない。