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kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

町工場からロケットを!「好奇心を”天職”に変える空想教室」(植松努)

「好き」の姿勢から町工場ロケットは生まれた!

池井戸潤原作の「下町ロケット」という小説が、阿部寛主演でドラマ化され人気を博している。中小の町工場が、大企業に対抗し、数多くの困難にぶつかりながら前代未聞のロケット開発の実現を目指していく。そんなストーリーだ。いかにもフィクション的な内容であるが、日本にそのような町工場が実在することを皆さんはご存知であろうか。

 

 

 

「植松電機」。北海道の赤平という小さな町に拠点を置くこの中小企業は、片田舎の町工場でありながら、ロケット開発に一から着手し、独自開発の人工衛星も飛ばしている。世界で3台しか存在しない無重力状態を再現する実験装置の開発にも成功。現在、あの宇宙開発大手JAXAもこの施設を使用して実験を行っている。NASAとの交流も深い。人口1万1千人の赤平には、年間1万人以上の学生たちが、この町工場を見学するために足を運んでくるという。

 

その植松電機の「今」を築いたのが、本書の著者”植松努”さん。TEDへの登壇経験もあり、その際のスピーチの内容は非常に高く評価されている。以下にリンクを貼っておいたのでまだ見たことがない人は是非このスピーチを聞いてみてほしい。きっと何か得られるものがあるはずだ。

 


Hope invites | Tsutomu Uematsu | TEDxSapporo

 

植松さんは、ちょっとした和風エジソンだ。幼いころから大きな機械に興味を持ち、本を通じて知識を獲得し、いろいろな発明をしてきた。一方で、学校での成績は芳しくなく、落ちこぼれ生徒の烙印を押された。「どうせ無理」が口癖な教師に散々否定され、あまり楽しくない学校生活を送っていたようだ。しかし、植松さんの知的好奇心は不可能を可能にした。冒頭で述べたように、小さな町工場で大企業にも匹敵するような宇宙開発装置の発明を実現。

 

本書では、植松さんが何よりも訴える「好き」ということの尊さ、そしてそれをどう生かして生きて行くのか、彼なりの秘訣を分かりやすく紹介してくれている。

 

植松さんはこどもの頃から読書家であるということだが、一般的な読書家とは少し種類が異なる。彼は”実践を伴う読書家”だ。よく飛ぶ紙飛行機を作るために、飛行機製作用の専門書を読む。自分なりのプラモデルを作成るためにペーパークラフトの本を読み込む。その知識は彼の手によって実践に移され、彼の地肉となり、後の活動に大きく役立っている。幼き頃から、知識を持つだけでなく、それを実践を通して自分の経験に昇華してきたのだ。だからこそ、北海道の田舎に住む彼にとって読書は欠かせないものになってくるのだ。私もこの”実践”の姿勢を見習いたい。

 

彼は今、「どうせ無理」という言葉をこの世からなくすために宇宙開発を行っているという。ある分野で秀でている人は、例外なく人格者でもある。植松さんもその一人だ。彼のようなあきらめない真っ直ぐな姿勢が、これからの日本には必要であろう。私もその一人になれるよう努力をしている。これからもしていく。

 

内容抜粋

▪️できなかったことが、できるようになること

人間にとって最もいいことは、「できなかったことが、できるようになること」だと思います。

 

▪️お金の使い方

ばあちゃんは小さいぼくに教えてくれました。お金はくだらないよ。一晩で価値が変わることがあるからね。だからお金があったら、貯金なんてしないで、本を買いなさい。知識を頭に入れなさい。それは誰にも取られないし、価値も変わらない。そして、新しい価値を生み出してくれるから。そう教えてくれたんです。さらにばあちゃんは「お金は、”自分の知恵と経験の”ために使ったら、貯まり続ける」と教えてくれました。

 

▪️本の使い方

本には、そんなすばらしい人間の努力と命が詰まっています。でもそれを「知ってる知ってる!」で満足したら、ただの雑学です。人生はクイズ番組ではありません。知っていれば正解、ではないんです。知らないこと。不思議なこと。それは、英語で「ワンダー」といいます。そしてワンダーがいっぱいな状態のことを「ワンダフル」といいます。世界には知らないことと、わからないことがいっぱい。だからすばらしいんです。知らないことは、全然悪いことではありません。ぼくたちがすべきことは、知識を詰め込むことではなく、昔の人たちの「努力の階段」を登っていくことです。

 

 ▪️失敗との向き合い方、意味がない野次は無視

失敗を自分のせいにしてはいけません。自分をいくら責めてもなんにもならないし、もちろん誰かを責めても、運の悪さを呪ってもなんにもなりません。もちろん、失敗すればまわりから「なにやってんの!」「誰のせい!」「どうすんの!」という声が聞こえてくることもあります。ぼくもさんざんいわれました。これも意味がない言葉だから無視していいです。大事なのは「なんで失敗したんだろう」「だったら次はこうしてみよう」という言葉をかけ合うことです。たったそれだけのことで、失敗は階段の一段となり、ぼくたちを未来に運んでいってくれます。

 

▪️ロボットに負けないためには

ロボットに負けないためには、なにが必要でしょうか。それは「考えること」です。これからは「考える人」が増えればいい。もうそのことに気づいている国があります。たのえば、ノキアボルボを生み出したフィンランドスウェーデン、またインテルやグーグル、マイクロソフトが重要な開発拠点を置いているイスラエルは、いずれも人口数百万人の小さな国ですが、大きな精算工場がほとんどありません。彼らは発明をして、研究をして、そして「より良く」を求めます。だから世界から「必要だよ」っていわれます。自動車用の安全装置のほとんどんは、ボルボが特許を取得していることを知っている人も多いでしょう。またこれらの3つの国に共通していることは、「教育費がほとんどタダ」です。しかも、小学生から授業で”会社の起こし方”や”発明の仕方”を教わります。会社は誰にでも作れますが、日本のほとんどの学校では”雇われ方”どころか、”受験の仕方”しか教えてくれません。また日本のメーカーはコピー商品ばかり作っていますが、アップルやダイソンという会社は「わけのわからんこと」をやります。でもだから、彼らは一番なんです。なにか違うと思いませんか。世界にこの事実に気がつきました。だから世界は今、考える人を探しています。

 

▪️「ちゃんとしているふり」をしていると、ろくなことにならない

間違えることは恥ずかしいことだと思っていたから、どんな間違いも認めなくなりました。よく分からない事柄についても、なんでも決めつけでものをいうようになりました。そうして、ぼくの中で「ちゃんとすること=人に迷惑をかけないこと」だったのが、いつも間にか「ちゃんとすること=人に弱みを見せないこと」に変わっていました。ぼくはいつもひとりぼっちでした。演技をするだけの塊になっていました。なにもかも、おかしくなっていきました。とうとうあるとき「ちゃんとしているふり」をしていると、ろくなことにならないんだな、ということに気がつきました。だからぼくは「ちゃんとしているふり」をやめ、現在のスタイルになっています。今ではずっと作業着を着ていますし、しょっちゅう居酒屋で酔っ払っています。みなさんも「自立しなきゃ」と思ったり、「自立しなさい」といわれたりすることがあるかもしれません。でもこれだけは忘れないでください。「自立は、孤立ではない」”会社”も”社会”も、おんなじ漢字を使います。どっちも「会う」という字を使います。会社も社会も、人が出会って、力を合わせるところ。ひとりではできないことを、みんなでするところなのです。

 

▪️「わからない」ということ

ぼくはこの本格ロケットを作ってもらうとき、最初に「作り方を教えないからがんばってね」といいます。「わかんない」っていったらわかんなくなるからね。わかんなかったら調べればいいんだよ。まずはまわりの人を見てごらん、学校ではカンニングするなっていわれるけども社会に出たら「見て盗め」っていわれるから、今のうちに練習しておいてね。そして見てもわからなかったら、人に聞けばいいんだよ。そして見て聞いてわかったことを、みんなでしゃべりな。そうしたらこの世から、わかんないことがなくなるでしょ?ぼくがそういうと、みんなわいわいがやがやロケットを作りはじめます。結果的に、全員すごく早く作れます。はやく作ることができた子が、なかなか作れない子に教えてあげるからです。教えてあげる子は、もっと覚えます。教えてもらった子も、助けてもらってできたことを喜びます。そして、みんな完成します。

 

▪️「どうせ無理」をこの世からなくす

ぼくはその先生がよく使っていた言葉をずっと忘れません。その言葉が「どうせ無理」なんです。今にして思えばその先生は、家庭で旦那さんからひどい暴力を受けてたみたいです。たまに顔にあざをつくって学校にきていることもありました。なるほどね、と思いました。暴力は必ず自分より弱いものに向かっていきます。だからこそ、子どもが犠牲になるのに違いないと。だからこの世から「どうせ無理」という言葉をなくしたら、この世から児童虐待がなくなるかもしれない。そう思っていたら、ロケットを作れるようになったのです。

 

▪️「まずい」と思ったら逃げるのもあり

まずいと思ったら、「逃げる」ことです。自分の失敗を許せなくて、自ら命を断ってしまう人がいます。ぼくの知っている限り、そういう人はまじめで、やさしくて、責任感のある人ばかりです。もったいないです。残された人のことも考えてほしいです。「まずい」と思ったら、逃げるのもありなんです。失敗して、ひとりで考え込んでぐるんぐるんになっちゃったら、とりあえず「逃げる」を選べばいいですからね。逃げたあとも、失敗した自分を、逃げた自分を、あきらめた自分を責めないでください。自分を責めてもなんにもなりません。自分の心の中はもう「苦しい」とか「つらい」とか「きつい」とか「悔しい」とか「申し訳ない」とか「悲しい」とか「恥ずかしい」が、ぐるんぐるんして大変なことりなりますが、そのときはこの言葉を唱えればいいです。「ただいま成長中」そうしたらぷりっとひと皮むけます。”ネクスト自分”になれますから、ぜひこの言葉を使って脱皮してみてください。