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kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

巨匠がオススメする書籍 Ver2

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これからの日本社会について考えさせられる3冊

前回のエントリーから勝手に始めた「巨匠がおすすめする」シリーズ。

 

日経新聞が特集を組む「目利きが選ぶ3冊」の内容を今後紹介していくことを宣言したが、早速、第2弾をエントリーする。

 

kaidaten.hatenablog.com

 

第2弾は、2016年3月3日夕刊から拝借。今回の3冊では、「現代社会」をそれぞれ独特な視点で捉えた著者達が、自らの考えを文章に落とし込んでいる。

 

「批判」・「啓発」・「投げかけ」

 

著者の真剣な想いが本の中に込められている。

 

 

 

ガラパゴス(評論家 野崎六助氏 推薦)

日本の劣化の現状を暴く

現代の底知れぬ深い闇を暴く、社会派ミステリーの熱烈な傑作が出現した。身元不明の変死者のファイルに隠された巧妙な殺人。喰らいつく刑事はおなじみの「清張タイプ」。全国を縦断し、被害者の足跡を追う。いやおうなく物語に流れ込む劣化日本社会の現状、基幹産業の失速、非正規労働者と人材派遣業者の急増。一方で、悪役が鮮烈だ。人材派遣会社と癒着する悪徳刑事。彼にも「復讐」の動機は充分にあった。正義VS悪という自明の構図は、すでに無効だ。複眼的視点で語られるが、多くの労働者を使い捨て、大企業を保護する政策への作者の怒りはストレートだ。

 

10年後、生き残る理系の条件(福山大学教授 中沢孝夫氏 推薦)

10年後、生き残る理系の条件

10年後、生き残る理系の条件

 

 キャリア広げる必要性説く

職場生活の先が見えにくくなっている。先輩たちの過ごした日々が、もうモデルにはならない。特に勤続15〜20年といった中堅層の悩みが深い。昨日までの仕事が明日からの仕事ではなくなってしまう事態が増えている。例えばエレクトロニクス系の商品の国先的な競争の激しさなど、商品の生命力はどんどん短くなっている。携帯端末など各種の製品を支えるフラッシュメモリーの開発を担った著者による「行動戦略」は、キャリアを磨き、広げることの必要性を痛感させる。本書は「理系」と銘打っているが、当然「文系」にも通底する。自分と家族を頼りに、知らないところに飛び込む勇気が求められる。

 

鳥打ちも夜更けには(批評家 陣野俊史氏 推薦)

鳥打ちも夜更けには

鳥打ちも夜更けには

 

奇想天外、政治的な寓話

舞台は「架空の港町」と呼ばれる、とある島。そこでは、町長の意向を受け、主要産業を漁業から観光に変えて、花畑で育つアゲハチョウをその目玉にしている。ゆえに、アゲハを捕食する海鳥は、厳しく制限されなければならず、吹き矢で海鳥を殺す仕事ー「鳥打ち」ーが必要不可欠な仕事となる。沖山、保田、天野の3人の鳥打ちが主たる登場人物。沖山が語り手である。3人はそれぞれ鳥打ちについての思想を持っている。その差異が、鳥に不穏な空気をもたらし、最後に持っているのは、奇想天外な破局だった……。稠密な文章がいい。それから、こうした寓話こそが、すぐれて政治的であることを再確認させてくれる。期待大。

 

さいごに

個人的に気になったのは「10年後、生き残る理系の条件」。理由は自分が理系だから。

 

技術の進展は目紛しい。IT業界では「ドックイヤー」という言葉がある。業界の進展するスピードを犬の成長に例えた表現であるが、今日、技術は急速に発展していく。

 

傲慢にあぐらをかいていればすぐに使い物にならなくなってしまう。そんな世界で、”理系”人間はどのように生きていけばいいのか。その戦略がこの本の中に込められているようだ。