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kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

時効後の殺人犯が告白本を出版したらどうなるのか

殺人犯の告白本の出版

22年目の告白-私が殺人犯です- (講談社文庫)

22年目の告白-私が殺人犯です- (講談社文庫)

 

殺人犯の手記は、一部の人間から異常な支持を受け、熱狂的なファンを生み出す。

 

そういう設定の推理小説を読んだ。作品が映画化されたことは知っていたが、いまいちどういうストーリーか分からない。気になったので、昼休みにジュンク堂で少しづつ読み進めた。

 

ということで、その感想を書く。

 

最近の推理小説は奇を衒わなければならない

よほどの大物作家でない限り、現代において推理小説をヒットさせるには、大なり小なりこれまでになかった視点から物語を描く必要がある。

 

この作品は、連続猟奇殺人事件の犯人が、殺人の経緯を事細かに記した告白本を出版するところから始まる。絶世の美男子で、食や文学に造詣が深く、男女問わずその魅力に取り憑かれてしまう、時効後の殺人犯。

 

映画では刑事目線で物語が進むが、小説では、出版社の編集者の視点でストーリーが展開される。個人的には、映画よりも小説の方が好きだ。映画監督が書き下ろした小説だそうだが、小説の方がよい。登場人物の心理描写が細かく、映像が文章に永久に勝てない点はここだろうな、と感じさせられた。想像力という点においては、文学に勝るものはないのではないだろうか。

 

韓国発の作品ということだが、ストーリーはなかなかおもしろいと思う。少なくとも飽きることなく読み進めることができた。殺人犯の素性や、最後にどんなどんでん返しがあるのか気になってページをめくるスピードが自然と早くなった。

 

最終的には、世に姿を現したイケメン殺人犯は、実は殺人犯ではなく、被害者遺族の一人だった。婚約者をサイコパスに殺され、人生に絶望していた青年が、他の被害者遺族の協力のもと、整形手術で顔を変え、アクタースクールで演技を学び、エンターテイナーとして世に放たれた。

 

目的は自己顕示欲が異常に高い真犯人を誘き出すため。この流れは、同じく猟奇殺人をテーマにした漫画「ミュージアム」の構成に類似している。どっちが先なのかは知らない。

 

脱線したが、真犯人は高い視聴率を誇る報道番組のメインキャスターだった。元戦場ジャーナリストだった彼は、戦場で同胞を目の前で虐殺され、なぜか自分だけ生き残るという稀有な経験をする。そのトラウマから逃れられずに、「この世に自分と同じ境遇の人物を生み出したい」という身勝手な欲求のもとに次々と人を殺めていった。

 

その後、逮捕されることなく時効を迎えたが、急に自らを殺人犯と名乗る人物が手記を出版し、爆発的なヒットを記録する。キャスターとして自己顕示欲を満たしまくっていた真犯人は、謎の自称殺人犯に自分の冠番組への出演をオファーし、看破しようとする。

 

その思惑は成功し、殺人犯が真犯人でないことが世間に露呈するのだが、番組中に放った何気ない一言が真犯人を真犯人足らしめる確固たる証拠となり、自称殺人犯が真犯人を追い詰める。ついでに時効成立だと思っていた事件は1日違いで実は時効がなくなっており、真犯人は逮捕されることに。

 

その後、被害者遺族の一人であるヤクザのせがれに精神病院の中で惨殺されるのであった。そして、自称殺人犯と担当刑事は自分たちの人生を歩んでいく。

 

というストーリー。

 

すかっとして面白かった。これくらい軽い小説がいいな。読みやすい。