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kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

東大名物教授がゼミで教えている人生で大切なこと

書評

今後の生き方を考える上で参考になる本だった

 

この人の歩んできた道のりはなんとなく自分と重なる部分があって、人生で直面した悩みや課題に「こうやって自分は対処した」「こういう風な考えもある」と色々書いてくれているので、「そうそうなるほど、こうやればいいんだな」と何度も共感できた。

 

仕事をしているとどうしても目先の成果や課題に目がいってしまい、自分のキャリアを長期的に捉えて戦略を立てることができなくなってしまう。だからこそ、こういう本をたまに読んで、本質について少しでも考えることが重要なのだと思う。

 

ただ一方で、机上の経済学と現実世界の経済に乖離が生じていると、その分野の第一人者が堂々と語っていることに少し違和感を感じだ。有識者の発言は尋常でないほど我々の日々の暮らしに影響を与える。実社会を肌身で感じられない研究者が少なからずいることに対して、危うさを感じた。この本の伝える本質ではないかもしれないが、そういう感覚は今後も忘れずに持ちたいと思う。

 

 

 

内容抜粋

 

私はいろいろな人との会話で、本を紹介してくれるようお願いすることが多い。そしてなぜその本を推薦するのかも聞くことにしている。それで読書の喜びが倍増するのだ。

 

私が抱えている情報処理の悩みは、一人の変わった経済学者の悩みというよりは、世界中の様々な職業の人が抱えている共通の悩みのようだ。膨大な様々な情報が次々に入ってきて、それを処理していく難しさだ。

 

後から考えてみれば、これも3ヶ月かけて綿密な準備をしたたまものであると思う。自分で一生懸命に準備のノートを作ることで、あとはそれを読まなくても、その場での自分の言葉で話すことで学生から評価される授業ができるというものだ。

 

ただ書くことについては、立ち止まってじっくりと考えることが可能であるが、講演の場合にはそうはいかない。壇上で沈黙するわけにはいかないのだ。その意味では瞬間芸の連続でもある。

 

若い頃は歩いている間に数学の問題を解けたことが結構あった。論文に詰まったときも、歩きながら考えているうちに光明が射したこともしばしばであった。

 

その秘訣は何かと言えば、「毎日一つ新しいことをやってみる」ということだという。

 

職業人生を歩む中で自分の価値を高めていくためには、人にはないような何か特徴的なものを持つようにすることが非常に重要であると思う

人と違ったことをやるためには勇気がいるものだ。しかしよく考えて欲しい。経済原則は、「差別化しないと競争には生き残れないのだ。あとは同質競争を続けて疲弊するか、それとも競争相手を潰すという方策が必要となる」ということなのだ。

 

そうした意味では、学問の世界の経済学と、現実問題としての経済の間に、大きな乖離があるということは、ある意味では大変に好ましいことでもある。その異質の二つを組み合わせることで、シナジーが生まれるのだ。

 

人生を長い投資プロジェクトと考えれば、目先の成果を気にしすぎて家族関係を壊すよりは、家族の幸せという長期の目標に沿った長期合理的な行動が必要である。

 

守れる範囲でのコミットメントは、長期的に見るとその成果はきわめて大きいはずだ。以前紹介した「毎日一つ新しいことをやってみる」というコジマの小島勝平氏の方法も、コミットメントということになる。

 

プロの人の話でおかしいと思ったときがあれば、それはひょっとしたらその業界の重要な変化を捕まえているときかもしれない。

 

灘高本は当時の私にとってハウツー物の本ではなかった。むしろ、私を叱咤激励する本、あるいはアジテートする本であったのかもしれない。

 

人間は、つねに自分の周りの人を、参考にする。あるいは自分の周りに目標にする人を探すものだ。

 

研究者人生は三段ロケットのようなものと考えるべきだろう。人生の中で何回か古いロケットを切り離し、新しいロケットに点火する必要がある。そうした切り替えをしていくことで、一生、生産性を維持することができる

 

読む→書く→話すというサイクルは私の知的作業の中でも重要な手法となっている