経営モデルチェンジに踏み出そう~日本経済新聞8月19日社説~
経営モデルチェンジに踏み出そう
本エントリーでは、8/19の日経新聞社説「経営モデルチェンジに踏み出そう」の内容を要約し、その中身について考える。
かつての栄光
企業経営の視点から戦後という時代を見渡すと、最初の半世紀弱とその後の20年あまりで明暗がくっきりと分かれた。前者の時代は造船をはじめ、自動車や半導体で次々に生産量や建造量の世界一の座を獲得した。このような日本的経営が世界のお手本になった。(シンガポール初代首相のリー・クアンユー氏が提唱した「日本に学べ運動」は有名)
成功体験が足かせに
ところが、いわゆるバブル景気が崩壊した1990年前半を転機として、長い停滞の時代に突入。いわゆる「失われた20年」だ。諸説があるが、企業や経営者が過去の成功体験にとらわれて、変革に尻込みしたことは要因の一つであろう。そもそも、日本のかつての高度経済成長は、戦後の人口増加に伴う内需拡大によるものが大きかった。その中で世界的に評価される商品を生みだした技術者達の技量には感服するが、少子高齢化時代に突入した人口の衰退期において、過去のやり方が通用しなくなる部分は多いだろう。
成功の明暗を分けた切り札
この「失われた20年」の中でも、業績を取り戻した企業、悪化させた企業がある。日経の社説では、前者を「日立製製作所」、後者を「シャープ」としている。両者の明暗をわけたのは事業の取捨選択だ。日立製作所は、”沈む巨艦”と揶揄されながらも、競争力を失ったテレビ事業などを切り離したことで、その原動力を生み出した。一方のシャープはというと、傘下に”ゾンビ事業”を多数抱え、メディアで多数報道されているように業績はかなり厳しい。
再編統合の課題
米フォーチュン誌によると、2000年には、世界の大企業500社のうち104社の日本企業が名を連ねたが、2015年は54社にとどまり、ほぼ半減したという。これを克服する一つの道筋が合併や買収によって、強力な企業をつくることだろう。先日、石油元売大手の出光興産と昭和シェルが経営統合することで基本合意した。国内生保も外資系生保を買収により傘下に加え、外需の拡大を図っている。
企業は個性を磨け
社説では京都の個性的な企業(京セラ、村田製作所、任天堂、エムケイなど)に上げ、横並び競争に背を向けて独自の価値を提供する企業が、これからの日本には必要だと述べられている。
感想
新聞・テレビ等のメディアで日本経済の変遷について論じられるとき、”過去の栄光”という言葉をよく見かける。
日本企業の発展は、人口増加による内需の拡大、欧米諸国の技術流入と円安に伴う輸出面の急拡大、これらがタイミングよく重なったため達成することができた、という一般的な意見はおそらく的はずれではないのだろう。
しかしながら、この業績は日本人ならではの勤勉さ、その時代を生きた技術者の”職人魂”があったからこそ成し得たものなのだと私は思う。今日ではその勤勉さが「画一的」と評され、逆にデメリットになってしまっている。
非常に残念だが、変化に対応できない者は淘汰されるのが資本主義社会というもの。日本企業は変革を余儀なくされているのだ。
「企業の個性」が必要となってくるのもそのためだ。そういう意味では、日本のベンチャー業界はよく頑張っていると思う。主にIT産業を中心に20代での企業家の数も増え、アメーバを始めとした様々なヒットコンテンツを世に配信する「サイバーエージェント」しかり、キュレーションサービスで一億人ユーザを保有する「Gunosy」など、世界的に注目される日経ベンチャー企業も登場している。
これらの比較的新しい企業への支援を強化し、その業績を伸ばしていくことも今後の日本経済の発展には必要なのだろう。
日立のような大企業の革命を期待するのと同時に、日本から早く「Google」や「Apple」のような真にユニークな企業が誕生してほしいとも思う。