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日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

原油安に気を緩めず改革の好機に

 

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原油安に気を緩めず改革の好機に

日経新聞社説シリーズ。8月24日の社説「原油安に気を緩めず改革の好機に」を題材に、日本・世界を取り巻くエネルギー事情について考える。

 

 

 

とまらない原油価格

原油価格の下落が止まらない。米原油先相場は一時、1バレル40ドルを下回り、6年5ヵ月ぶりの安値水準に落ち込んだ。原油安は消費国の負担を軽減し、景気の改善を後押しする。もちろん日本にもその恩恵は広がりつつある。

 

解消せぬ供給過剰

下落に歯止めがかからないのは原油余りの状態が一向に解消しないためだ。国際エネルギー機関(IEA)によると、2015年4~6月に需要を上回った供給量は前年同期の2倍以上に増えた。米国ではシェールオイルと呼ばれる新型資源の生産量が高止まりし、石油輸出国機構(OPEC)も高水準の生産を続けている。それと反するように、新興国の需要を牽引してきた中国経済は減速懸念が強まっている。ギリシャ問題をはじめとする欧州経済の低迷で世界の需要は伸び悩んでいる。原油に限らず、新興国の旺盛な需要を背景に商品相場が大幅に上昇する「スーパーサイクル」は転機にある。原油が高値に戻ることは当面、考えにくい。原油安は長引くと考えられる。

 

日本は原油高の痛みを忘れるな!

日本経済は原油安で一息ついた。東電第一原発の事故後にすべて止まった原発を代替するための原油や天然ガスの輸入が急増し貿易収支は11年に赤字に転落した。しかし、原油安の進展により電気・ガス料金は下がり始め、企業業績への好影響も期待できる。

ただし、日本は原油高の痛みを忘れてはならない。国内消費のほぼ全量を輸入し、その8割超を中途産油国に頼る脆弱さは変わらない。調達先分散の努力を怠ってはならない。シェール革命はエネルギー貿易の流れを変えた。この変化を積極的に取り込む必要がある。米国ではシェールオイルの増産によって13年の南米やアフリカ産の原油輸入量を減らしている。これらの原油はシェールオイルと比較的成分が似ているためだ。米国市場から押し出された原油はアジア市場に流れ込んでいる。日本はこれらの輸入を増やし、中東への依存率を下げるべきだ。

 

省エネ努力の継続を

省エネの努力も続けることが重要。スマートハウスを代表するように、ITを使って電量消費の無駄を省いたり、電気自動車燃料電池車の普及を促したりする挑戦がイノベーションに繋がるはず。

 

産油国への支援も必要

産油国は歳入の大半を原油輸出に頼り、原油安は国家財政を圧迫している。原油安の長期化は世界経済の新たな波乱要因となりかねない。また、米エネルギー省も、シェールオイルの生産量は20年代に入ると緩やかに減少に向かうと予測する。原油供給地としての中東の存在感が再び高まる可能性がある。雇用創出や産業育成への協力など、中東産油国の安定に向けた地道な関係強化の大切さは変わらないことを認識する必要がある。

 

感想

かつてのオイルショック問題を思い出すと、日本を始めとしたエネルギー輸入国にとって、エネルギー調達先の分散は永続的な大きな課題であろう。記事で述べられているように、米シェールガスの登場でエネルギー貿易市場に変化が生じている今日、この変化を好機として活かすことが望まれている。資源枯渇の問題が叫ばれるようになって久しいが、今回のシェールガスのように、比較的大きいスパンで眺めると、石油代替エネルギーは今後も登場してくる可能性が高い。その度に発生する「エネルギー革命」に適切に対応していくことこそが、非産油国である日本に求められていることだと私は思う。そういう意味でも、エネルギー市場が揺れ動くこのタイミングで、日本がどのようなアクションを起こすのかよく観察しておきたい。