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日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

人手不足問題 その解決策を模索する~日本経済新聞9月3日社説~

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深刻な人出不足問題

日経新聞社説シリーズ。

 

今回は、2015年9月3日の社説「人手不足の根にあるものを見極めよう」を題材とする。

 

少子高齢化時代に突入してから長年問題視されてきた「人手不足問題」。

 

日本は今、その原因を真摯に受け止め、解決策を模索しなければならない状況にある。

 

 

 

社説要約

人手不足が深刻だ。人口減少で労働力不足が進めば経済の成長を妨げかねない。

 

少人数で仕事ができるようにしたり、求められる技能を備えた人材養成に力を入れたりするなど、多面的な対策を急ぐ必要がある。

 

人手不足の原因

いまの人手不足の原因は、一つには経済のサービス化に雇用構造が追いついていないことだ。

 

求職者1人に求人が何件あるかを示す有効求人倍率を眺めると、「介護・接客・給仕」サービス分野で人材需給の逼迫が目立つ。保育士や看護師不足も懸念されているとのこと。

 

また、技能を持った人材の供給が足りていないことが人手不足の根にあるとの見方もできる。ものづくりの現場では機械の整備・修理の有効求人倍率1.99倍と高い。建築・土木・測量の技術者は3.68倍にのぼる。

 

具体的な対応策は?

こうした人手不足の背景をよく見極め、効果的な対策を打っていく必要がある。


労働集約型のサービス分野は、多くの人手に頼らないビジネスモデルへの転換を求められる。付加価値の高い商品やサービスを提供するなど1人あたりの生産性を上げる努力が要る。

 

IT活用の余地も大きい。期待されるのはロボットによる省人化だ。

 

介護や医療支援用などの技術開発を加速したい。建設業の生産性向上にも効果が見込める。ロボットの普及へ政府は安全基準の整備を急ぐ必要がある。

 

また、技能を備えた人材を育て、成長分野へ労働力を移していくために公共職業訓練の役割も重要になってくる。行政は、バウチャー方式(※1)で利用者が訓練施設を選べるようにし、施設を競わせるなど、職業訓練の質を高める工夫していくべきだ。

 

※1 バウチャー方式とは?
「バウチャー」は引換券を意味する。バウチャー制度は、国・自治体が目的を限定して個人を対象に補助金を支給する制度のことを指す。教育・保育・福祉などの公共サービスが対象で、利用者はその中から必要なものを選択し、引換券を提出してサービスを受ける。

 

潜在的労働力を高める

高齢者や女性の就業促進も分野を問わない課題だ。

 

企業はフルタイムでなくても働ける短時間勤務の制度を整えるなど、潜在的な労働力の活用に努めてほしい。

 

外国人労働力は受け入れ拡大を真剣に考えるとき。経済連携協定EPA)に基づくインドネシアなどからの介護や看護の人材はもっと増やせるだろう。

 

感想

今回の社説の内容には同意できる。

 

サービス業を中心に需給のバランスが崩れ、人材不足が深刻化していることは数多くの専門家が指摘していること。一人あたりの作業負荷が増し、それが離職率を高める大きな要因にも繋がっている。悪循環から抜け出せない状態が続いているのだ。

 

このような潮流を鑑みると、公共職業訓練のような政府主導の政策が必要と言える。今こそ、行政が中心となり、人材不足問題に立ち向かっていくべき時なのである。

 

社説ではITの積極的な取り入れを推奨しているが、そのIT業界も将来大幅な人材不足が予想されている。資源のない我が国において、経済の主体そのものである労働力が減少することは死活問題だ。「ITが人間の仕事を奪ってしまう」などど悠長なことを言っている暇はない。作業効率化に繋がる技術を積極的に利用し、労働力を補完することで「省人化」を推し進める必要があるだろう。


潜在的労働力の底上げについても大賛成だ。定年を過ぎても働く意欲のある高齢者は数多く存在し、団塊の世代引退に伴いその比率はますます大きくなるだろう。

 

介護分野を中心に外国人労働者正規雇用化も進んでおり、現実的な範囲から外国人労働者の取り込みが始まっている。今後彼らのような人材が活躍できるような土壌を作っていくことが、行政には求められているはずだ。