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日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

マイナンバー制度を利用した消費税減税と予想される弊害〜日本経済新聞9月5日一面〜

 

導入目前「マイナンバー」制度

9月5日の日経新聞の一面に、「酒除く食品消費税減税〜政府案マイナンバー活用〜」の見出し。制度も導入目前ということで、今回のエントリーでは、「マイナンバー」制度を利用した消費税控除について、そして諸外国でのマイナンバー制度の導入実績について紹介してみようと思う。

 

(ちなみにマイナンバー制導入に向けて個人で準備すべき内容は↓でまとめている)

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日経一面要約

政府は消費税率を2017年4月に10%に引き上げるのに合わせて、一部の商品の税率を低く抑える軽減税率の骨格をまとめた。軽減税率の対象として、「酒を除く全ての飲料食品」の政府案に決定。個人の所得に応じて税額軽減を受けられる限度も定める。消費者が10月から始まる税と社会保障の共通番号”マイナンバー”の仕組みを使って買い物し、軽減分を消費税から後日還付してもらう仕組みも特徴。

▪️増収効果減少の問題と、その解決策

軽減税率は自民、公明両党が消費税率10%への引き上げ時の導入を目指している。ただ税率引き上げによる増収効果が小さくなるほか、事業者の手間が増える課題があり議論は難航。今年6月に与党の協議を一時中断し、財務省に制度の骨格作りを指示していた。骨格の第1の柱として軽減税率の対象を「酒を除くすべての飲料食品」とした。ただ、酒をのぞくすべての飲料食品を軽減税率の対象にした場合、1%の税率軽減で税酒が6600億円も減る点が難題とされた。そこで、軽減税率の対象範囲を広げつつ税収減を抑える仕掛け、骨格の第2の柱である所得別の限度額を採用することで対応するとのこと。

▪️消費税軽減の仕組み

消費者は買い物の時点では食品にも通常税率にあたる10%の消費税を支払う。仮に軽減後の税率が8%になった場合、月に5万円の飲食料品を買う人は総額5千円の消費税を払う。払った5千円のうち軽減分の千円が後日戻ってくる。軽減税額はその人の所得に応じて年間の上限額を決定。そして骨格の第3の柱が、改正法が成立したマイナンバーの仕組みの活用。マイナンバーはすべての住民に番号が2015年10月に配られ、2016年1月からICチップ付きの番号カードが発行される。軽減税率を受けるには消費者が食品を買うごとにマイナンバーの番号カードを店頭のITシステムにかざす仕組みが想定されている。番号カードをかざすことで蓄積した買い物情報を所得情報と付き合わせ、各人が受ける軽減税額が決まる。年末調整や確定申告の際、軽減税率を受けるはずの金額を所得税から戻す還付を受ける見込み(下図参照)。消費税は低所得者ほど収入に占める負担が大きい「逆進性」が問題で、軽減税率はその緩和策だ。

 

(図)マイナンバーによる消費税軽減の仕組み

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諸外国の例から考える、マイナンバー制度導入で予想される弊害!

さて、諸外国でのマイナンバー制度導入実績に焦点を当ててみる。現状、欧米諸国や韓国など多くの国々で共通番号制度が使用されている。

その中でも今回は「アメリカ」に着目してみよう。アメリカで採用されている共通番号制度はその名も「統合モデル」。あらゆる分野で共通して1つのIDコード(社会保障番号『SSN』)を使用して個人情報を管理するモデルだ。元々は、世界恐慌による体制崩壊を危惧して導入された共通番号制度だが、現在は、行政に留まらず民間でも幅広く使用されている。導入後、個人情報の管理負荷は大幅に改善されたという。

しかし一方で、共通番号管理制度による弊害についても大きく取り上げられている。情報セキュリティ問題だ。現在アメリカでは、SSNの漏洩、売買による被害が深刻化しており、「なりすまし犯罪者天国」のような状況に陥っているとのこと。日本が同じ轍を踏まないとも限らない。先日、日本年金機構の情報流出問題を取り上げたばかりだが、マイナンバー制度の導入により個人情報の管理リスクは格段に上がるだろう。セキュリティ面の強化が必要なことは言うまでもない。

 

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最後に

いよいよ導入間近になったマイナンバー制度。個人情報の事務処理が簡易化される反面、アメリカの例のような情報漏洩問題についても軽視できない。制度導入に際しては、行政・民間が協力して慎重に進めていくべきだろう。そもそもマイナンバー制度の世間の認知度が50%を下回っているのも問題だ。記事では、低所得者層の「逆進性」に対する考慮もなされていると書かれているが、その低所得者層の人々がICカードを使用した上記システムをきちんと利用できるよう、国・行政は国民に対して広く啓蒙活動を行っていく必要があるだろう。

 

あとがき

上記で取り上げた情報セキュリティ面の話は、国会でも問題視されているようだ。後日減税還付の仕組みを利用した場合、マイナンバーを管理するICチップ付個人登録カードを常に持ち歩かなくてはならない。日本年金機構のような情報管理機関での大規模な情報漏洩リスクはもちろん、カード紛失に伴い個人の口座情報が漏洩する可能性もあるのだ。国もそのことを自覚し、今現在、財務省を中心に対策を検討しているとのこと。

 

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