kaidaten's blog

kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

伝える力(池上彰)

 

書評

伝える力 (PHPビジネス新書)

伝える力 (PHPビジネス新書)

 

 「良い質問ですね!」を口癖に、多くのテレビ番組で、政治・経済の難しい話を子どもでも理解できるように私たちに解説してくれる”池上彰”さん。

本日は、彼の著作の一冊「伝える力」をエントリーしてみた。なぜこの本を選んだかというと、最近、ブログの更新頻度が高くなり、第三者を意識して文章を書く機会が多くなったからだ。過去のエントリーを読み返してみては、「あ~この文章長くて意味分からないな」「この部分の説明はまどろっこしいから省けばよかった」と反省することが多々ある。そこで、「わかりやすく説明することの達人」とも言える池上彰さんの ”伝える力”に一度触れてみたいと感じてこの本を手に取った。

 

■「伝える」ということの本質

本書を読んでいて思わず頷いた点は、「自分が完全に理解していないことは、他人にきちんと説明することができない」という事実。本書では、アナウンサーとの会話を例に挙げているが、私自身もこのような経験を何度もしたことがある。例えば、業務上のとあるシーン。担当プロジェクトの見積書を上司に提出する際、見積の内容を詳細まできちんと落とし込むことができていないことがあった。上司から浴びせられる質問に自分でも何を言っているか分からない回答をし、結果、再提出に。上司からの質問は非常に的を得たものであった。しかし、核心を突いた率直な疑問に私は答えることができなかった。それは見積の内容を完全に理解していなかったからだ。このような例はいくらでもある。台本を用意していればそれっぽいことをそれっぽく語ることができる。しかし、いざ単純な質問をされると満足のいく答えができなかったという経験は誰しもが持っていると思う。実は、単純な質問ほど物事の核の部分に触れていることが多い。日頃から詳細かつ俯瞰的な視野で対象を捉えていなければ、理論的に分かりやすく説明することはできないのだ。この点については、私自身も今後意識していこうと思う。

 

■分かりやすい文章を書くには?

そして、私の課題でもある「わかりやい文章を書くにはどうすればよいか?」という問いについても、池上さんご自身の持論をいくつか解説してくれている。

まずは「聞く耳をもつこと」。第三者にとって分かりやすい文章を書くにためには、第三者の意見を聞く必要がある。当然のことだ。しかしながら、周りの人から「自分が書いている文章の読みやすさ」について意見を頂く機会って実はあまりない。ここは一つ、読者の方々、どんな否定的な意見でも受け入れるので、私の文章で何か気になる点があればメッセージ欄に一言お願いします。

次に「優れた文章を書き写すこと」。池上さんがNHK局員だった時代、彼は先輩社員の過去の記事を業務外の時間にひたすら書き写すことで、優れた文章のリズムを身体に叩き込んでいったそうだ。私はこのブログで書評をエントリーする際、必ず「内容抜粋」というかたちで心に残った文章を残している。この「内容抜粋」枠は元々自分のために設けており、本から得た学びを忘れないように文章をそのまま記載している。実際、私はこの「内容抜粋」枠をよく見返して、過去その文章を読んだときに抱いた感覚を反芻するようにしている(著作権的に大丈夫なのかな?)。それはそれで自分のためになっているのだが、実は文章を書き写す行為自体が自身の文章力向上結びついているのかもしれない。本の文章を書き写していると、本当に少しずつだが、そのリズムが頭に入ってくる。そしてそれは経験として自分の中に蓄積されていく。

 

その他

また、「ブログを書くこと」「新聞のコラムを要約すること」など、私が現在実践している内容についても紹介されていて、少し嬉しかった。自分で言うのもなんだが、ここ数ヶ月で文章を書く能力が確実に向上していると思う。読者の方々からの「まだまだ読みにくいよ!」と突っ込みたくなる気持ちは重々承知している。が、試しに私の過去のエントリーを遡って読んでみてほしい。元がひどいので、のびしろが有り余っているのだ。

 

今回の書評は以上。自分の文章力を向上させたい人は一度本書を読んでみればよいと思う。何か得られるものがあるはずだ。(ちなみに、池上さんてテレビで見るよりも癖のある人なんだな~とこの本を読んで感じた。)

 

 

 

内容抜粋

■自分が理解していないと相手にも伝わらない

あるとき、知り合いのアナウンサーが放送でニュース原稿を読んでいるのを何気なく聞いていると、ある一ヶ所で突然、その内容が頭に入らなくなったのです。放送が終わった後で、その人に聞いて見ました。「今の放送で、意味がわからないまま読んだところ、なかった?」と。思った通りでした。原稿を読んでいるとき、突然フッと集中力が途切れ、その部分の原稿の意味がとれなくなったそうです。意味がわからないまま読んだり話したりすると、それを聞いている相手も意味がわからない。そのことを、私はこのとき初めて知りました。

 

■警察庁と警視庁の違い

ちなみに、警察庁は「全国の警察本部をとりまとめている国の役所」で、警視庁はいわば「東京との警察本部」のことです。警察庁のトップは警察庁長官で、警視庁のトップは警視総監。

 

■聞く耳をもつこと

少なくとも文章で物事を伝える場合、人の意見を聞くことなく上達することは、まずありません。特に文章力に根拠のない自信を持っている人は、独りよがりの文章を書きがちで、読む人の立場を考えていないことが多いものです。まずは謙虚に、人の意見に耳を傾けることから始めましょう。

 

■余計なプライドはいらない

三十数年間に及ぶジャーナリスト生活を振り返って、一つ明らかにいえるのは、よけいなプライドを持っている人は「そこまで」だということです。意味のないプライドが邪魔をして、成長できるせっかくのチャンスを自らみすみす逃してしまうのです。実にもったいないことです。

 

■最初の「つかみ」が重要

つかみが大切なのは、何も映画に限ったことではありません。たとえば、新聞の連載記事。(中略)しかし、切り口が問われる連載記事はそうはいきません。読んでもらうための”仕掛け”が必要になります。そこで大きな力を発揮するのが、つかみ。文字通り、導入部で読者をつかまないといけない。

 

■建前と本音

建前を中心に話をせざるを得ない場合は、本音を少し挟んで話すと、高感度は往々にして上がります。フォーマルな席で、少しカジュアルな雰囲気が出ると、聞いている側はその人の人間性を垣間見ることができ、親しみを持てるようになるからです。

 

■優れた文章を書き写す

できれば文章を書き写すことです。そうすることで、読んだだけではわからなかったそれぞれの文章のよい面、悪い面が、より明瞭に見えてきます。(中略)入社当時は何をどう書いたらよいのか、さっぱりわかりませんでした。経験がなかったのですから、当たり前です。そこで私がとった行動は、先輩記者が書いた原稿を書き写すこと。私が最初に配属されたのは島根県の松江放送局でした。そこで、先輩記者が書いた原稿をひたすら丸写ししたのです。いったん帰宅した後、深夜に局に戻り、先輩たちが書いた原稿の綴りを引っ張り出し、一字一句を書き写していきました。当時は、パソコンはおろかワープロもない時代でしたから、鉛筆でひたすら書き写すのです。島根県庁担当、島根県警担当、松江市役所担当などなど、それぞれの先輩が書いた原稿を書き写しながら、ニュース原稿の書き方を頭と腕に叩き込んでいったのです。(中略)この方法は何も私の専売特許ではありません。作家をめざす人も、自分が好きな作家の文章を丸写しして、文章力を磨く練習をすることがよくあるようです。浅田次郎さんも「文章修業のため、川端康成谷崎潤一郎らの文章を書き写した」と発言しています。

 

演繹法帰納法

報告書をまとめる場合、論理学でいうところの「演繹法」と「帰納法」の考え方が参考になります。(中略)演繹法とは、ある事柄を前提として、具体的な一つの結論を得る推論方法のことです。これに対して帰納法とは、個別具体的な事例から、一般手的な規則を見出そうとする推論の方法です。(中略)たとえば、「バラにはトゲがある」という前提から出発して、ハマナスはバラの仲間だから、ハマナスにもトゲがあるだろう、と推論するのが演繹法です。これに対し、観察した100本のバラすべてにトゲがあったとします。そこで、「バラにはトゲがある」という結論を出すのが帰納法です。

 

■ブログを書く

「他者の刺激を受ける」という意味では、ブログも励みになるかもしれません。ブログは誰かに読んでもらうことを前提に書いているからです。その意味では、日記や備忘録とは持つ意味が決定的に異なります。

 

■新聞のコラムを要約する

文章力を向上させるには、新聞の記事を短くする訓練をするのも役立ちます。(中略)要約することを前提にして読むと、単に読む場合と違って、その文章をより深く理解しようとします。言いたいことは要するに何なのか、必ずしも必要ではないところはどこか……なども考えながら読むでしょう。(中略)こうした訓練を何度か繰り返すうちに、あなたの文章力、さらには考える力も確実に向上していくはずです。

 

■文章で「そして」「それから」はなるべく使わない

文章力を高めようと思って、自分に課したことがあります。それは、接続詞をなるべく使わないことです。「そして」や「それから」の類です。これらの接続詞が多い文章は、幼稚になりがちです。子どものころの作文を思い浮かべるとわかると思います。(中略)本来、文章が論理的であれば、「そして」や「それから」は不要なはずです。

 

■文章で「いずれにしても」は絶対に使わない

「いずれにしても」「いずれにしましても」は、絶対に使ってはいけません。「いずれにしても」は、その直前まで書いていたことの論理に関係なく話を無理にまとまる行為です。場合によっては、それまでの論理の流れを否定しかねません。(中略)最後に「いずれにしましても」と書いたのでは、前に書いていたことは何だったのか、ということになってしまいます。

 

■使わないほうがよい言葉や文字

改めて「使わないほうがよい言葉や文字」をおさらいしてみましょう。
・そして/それから
・順接の「が」
・ところで/さて
・いずれにしても
・絵文字の類