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kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

効果的な国際金融規制〜日本経済新聞9月24日社説〜

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国際金融規制の概要

久しぶりの日経社説シリーズ。国際金融の話を取り上げよう。9月24日の社説「効果的な国際金融規制を構築せよ」をテーマにエントリーする。

 

 

 

日経社説要約

リーマン・ブラザーズ破綻から7年余りが経過した。金融機関を規制しようという動きは今尚続く。世界経済に甚大な被害を与えた金融危機の再発は防がなければならない。厳しい金融規制は必要だ。

 

▪️持続的成長の視点も必要

しかしながら、過剰な規制によって金のめぐりが悪くなり、経済成長が妨げられてはいけない。持続的な経済成長に資する、バランスの良い国際的な金融規制の構築を急がなければならない。

 

▪️リーマンショック後の規制強化 1

リーマン・ショック後の金融規制の強化は2つの大きな流れを指摘できる。1つは、各国当局で構成するバーゼル銀行監督委員会(※1)がつくり、世界中に適用を求める自己資本比率規制(※2)だ。融資などのリスク資産を分母、株式などから成る資本を分子とし、一定以上の比率を保つよう義務づける。

 

※1 バーゼル銀行監督委員会

バーゼル委員会」とも呼ばれ、G10諸国の中央銀行総裁らの合意により、スイスのバーゼルで創設された機関で、銀行監督に関する継続的な協力のための協議の場のこと。同委員会は、4年に1度、定期委員会を開催しており、銀行の監督及びリスク管理に関する実務を世界的に促進し、強化することに取り組んでいる。

 

※2 自己資本比率規制とは

バーゼル銀行監督委員会が進める自己資本比率規制とは、銀行の健全性を図る「自己資本比率」の割合を8%以上に規定し、維持しようとする規制のこと。

f:id:kaidaten:20150924164014j:plain自己資本

TierⅠ:基本的項目として資本の部

TierⅡ:補完的項目として劣後ローンや有価証券含み益の45%など

TierⅢ:準補完的項目として短期劣後債務が含まれる。

・リスク・アセット
資産に関する貸倒れの危険性の総量のことで、資産の種類ごとにリスクウエイトを乗じて加算する。国債は0%、銀行向け融資は20%、住宅ローンは50%、企業向け融資は100%を乗じて合計。

 

このような規制は銀行経営の安定を目的に、1990年代に導入され、その後、比率の引き上げなどの強化が段階的に進んだ。ただ、問題はバーゼル規制をとりまく状況が不透明なことだ。足元では銀行が保有する国債金利変動などに備えて、資本の積み増しを求めてはどうかという案が議論されている。国債を大量に保有する日経銀行は反対しているが、議論がどのように収束していくかは見通しが立てにくい。このように規制環境が不透明さを増してくると、銀行は思い切った戦略が取りにくくなる。規制強化に備えて取引のリスクをあらかじめ抑える動きが強まると、経済成長に必要なお金を企業に回す資金仲介機能が衰えかねない。

 

▪️リーマンショック後の規制強化 2

もう1つの規制の大きな流れは、各国独自の金融機関の業務制限だ。銀行と証券の垣根を高くしたり、投機性の高い業務を禁じたりするというのが主な内容だ。たとえば危機の中心地となった米国では、金融機関の経営を安定させるためボルカー・ルール」(※3)なる制度が導入された。

 

※3 ボルカー・ルール
銀行が自己資金で自社の運用資産の効率を図るためにリスクを取って、金融商品を購入・売却、取得・処分することを禁止する規制。米国銀行によるデリバティブや商品先物の取引を規制し、未公開株ファンドヘッジファンドなどへの出資も制限する。

 

高リスク取引の制限は欧州など他地域でも導入されつつある。しかし具体的な中身はばらばらだ。このため日本の三大銀行グループを含む大手の金融機関にとって、グローバルな業務展開がしにくくなっている面がある。

 

▪️新しい担い手も必要

金融危機後の国際協調を進めるため、先進国と新興国の監督当局が金融安定理事会(FSB)なる組織を作った。金融庁はこのような場を活用して過剰規制の弊害を指摘し、各国ルールの調和を働きかけるべきだ。金融危機後は、金融とITの融合が進み、銀行を仲介せずインターネット上で金の貸し借りをする動きが広がり、仮想通貨の利用も進んでいる。ファンドが投資家からお金を集めて企業に融資する例も増えている。こうした動きは金融仲介機能の低下を補う意味でも重要だ。