金融とITの統合「フィンテック」とは?〜日本経済新聞9月30日〜
世界の大手銀行がフィンテックで大規模提携
日米欧の大手銀行が最近話題のITを駆使した「フィンテック」で提携するそうだ。金融業界にとっても、IT業界にとってもビックニュースだ。
ということで本エントリーでは、日経新聞9月30日記事「日米欧22行が提携〜金融・IT統合『フィンテック』〜」をテーマに、世界の金融業界の動きについて考えてみよう。
そもそもフィンテックとは?
フィンテックとは、ファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)を組み合わせた造語のこと。スマホや人工知能(AI)などITを駆使した新たな金融サービスを総称しており、ITに強いベンチャー企業などが参入しやすい分野から徐々に広がってきた。規制の厳しい金融業界はこれまで新規参入が難しい状況にあったが、今回の件で大規模参入に踏み込むこととなった。
日経記事要約
▪️フィンテックで決済システム安価に
日米欧の大手22行が金融とITをつなぐ「フィンテック」で連合を組む。日本からは三菱UFJフィナンシャル・グループが参入。送金などの決済を低コストで処理できる共通システムを構築する予定。手数料の引き下げなど利用者の利便性を高め、IT系の新規参入企業にも対抗する。
▪️ブロックチェーン技術
活用するのは「ブロックチェーン」と呼ばれる技術。お金を送る際、従来は金融機関がお金の所有権を移ったことを承認してデータベースに記録し、取引が成立していた。これに対し、新技術では同じシステムの利用者がお互いに取引があったことを承認し、確認し合う。承認作業は暗号化されたまま自動的にされ、改ざんなどの不正ができなくなっている。データベースが必要ないため低コストで手数料を安くできるうえ、決済などの処理速度も向上する。(下図参照)
フィンテックが適用されている「仮想通貨」は海外送金の手数料が既存の金融機関の10分の1程度と安いことが普及を促す一因となった。新技術は手数料を下げる圧力になるが、22行は自ら主導権を握って国際規格を目指すことを優先。上記銀行群はブロックチェーン技術で先行する米国のフィンテック企業「R3」と提携し、共通のシステム作りに取り組んでゆく。
▪️フィンテックを取り巻く情勢
スマホの普及や人工知能(AI)の発達を背景に、フィンテックが関わる市場は急速に拡大している。IT企業を中心に金融ビジネスの新規参入が急増しており、収益基盤を脅かされた金融大手は相次ぎ新技術の取り込みに動きつつある。同様の動きが続けば技術革新が一段と進みそうだ。
感想
システム開発に携わる者として、フィンテックの急拡大は至極妥当な流れと言える。IT化が急激に進むにつれて、アマゾン、セブン&ホールディングスをはじめとした小売り大手が金融業に進出し、安価で便利なサービスを提供し始めた。近年では、大手金融企業も無視できない程の躍進を遂げている。日欧米22行の提携が、この流れを睨んだものであることは言うまでもない。今回紹介したブロックチェーン技術により、銀行は独自のデータベースを持つ必要性がなくなり、長期的に見ればシステムコストを大幅に低減することができる。サイバー攻撃が激化する今日、個人情報の保存媒体を少なくし、堅牢なシステムを構築することにも繋がるだろう。大手銀行のブロックチェーン技術導入は金融業界を取り巻く環境と時代の流れを読んだ賢明なものと言える。今後このような動きはますます大きくなっていくだろう。
日本からの参入が三菱UFJグループだけ、という点が気になる。システムコストについては、無駄な部分はとことん削り、その分防御が必要な部分により多く投資していくことが基本。日経その他企業もその基本を認識し、三菱UFJのような思い切った決断を下していくことが必要だ。