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kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

医療革新「遠隔診療」サービスが地味にスゴい

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遠隔診療サービスの今を追う

勤め先の入社研修時、新規事業開発をテーマにしたグループークを実施した。我々のグループが選んだテーマは、ITと医療を統合した「遠隔診療」。企画書を作成しながら「ドラえもんの道具でもない限り実現不可能だな(笑)」といった内容の会話を同期と交わした記憶がある。ほんの数年前の話だ。そんな実現”不可能”なはずだった遠隔診療が、今、現実のものになろうとしている。いや、なっている。本エントリーでは、そんな医療革新の先駆けとなる「遠隔診療」の現状をご紹介しよう。対象の日経記事は2015年12月21日3面「遠隔診療 ベンチャー先行」。

 

 

 

ベンチャーが先行して遠隔診療を実現化

遠隔診療でベンチャー企業が大手に先駆けサービスを始めた。従来は一定の制限があったが、厚生労働省が2015年8月に実質的に解禁。インターネットを使用し、離れた場所でもスムーズに診療できるシステムの提供に相次ぎ乗り出している。詳細なルールが不透明な部分も残っているため大手企業は参入に慎重だが、医療分野で新たなサービス競争が始まりつつある(下図参照)

 

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例① ポート 〜高血圧など10症状仲介〜

port-medical.jp

情報サイトなどを手がけるポートは、血圧や尿酸値が高い人、肌荒れなど10症状を対象に遠隔医療の仲介サービスを始めた。パソコンやスマホを通じて同社と提携する医師が診断して薬も処方する。薬はネットを通じて診察した医療機関から自宅や職場に直接配送する仕組みだ(上図 例① 参照)。例えばネットで診療を申し込むと「治療中の病気はありますか」「薬を飲んでアレルギーなどが出た経験はありますか」といった質問が送られてくる。これに加えて健康診断の結果やお薬手帳のデータなど必要な情報を送信すると医師が診察をする。原則として一度実際の医療機関で診断を受けた利用者を対象にするが、対象となる症状などによっては改善のためのアドバイスを最初からするケースもある。高血圧など継続的な治療が必要な利用者の利便性は高い。診察料は1回800円。薬代は実費でクレジットカードで決済する。ポートは診察料の一部をシステム利用料として受け取る仕組みだ。

 

例② メディカルフィットネスラボラトリー 〜小児科向けにシステム〜

www.medicalfitness.co.jp

メディカルフィットネスラボラトリーは医療法人のナイズに遠隔診療向けのシステムを提供した。ナイズは東京都内を中心に小児科の病院などを展開している。ナイズでは実際に病院で一回受診した利用者を対象に遠隔診療をする。受診した際にIDやパスワードを発行。2回目以降の受診で利用者が希望すればテレビ電話などで診察や薬の処方をする(上図 例② 参照)。小さな子どもを連れて何度も受診することが難しい親などの需要に着目し事業化に踏み切った。同社は電子カルテと遠隔診療向けの電話を一本化したシステムを開発している。

 

遠隔診療の課題 〜定まりきらぬルール〜

高齢化や慢性疾患の増加などで遠隔診療の需要は膨らむ見通しである。2018年には世界で利用者は700万人になるとの予測も出ている。だが日本では市場の開拓が始まったばかり。参入各社が実質解禁と受け取った2015年8月の厚労省通知は、「現代医学から見て、疾病に対して一応の診断を下し得る程度のものであれば、医師法に抵触しない」とするが、どのような人なら遠隔診療ができるかどうかなどは明示していない。触診や血液検査などができないといった課題もある。市場に参入したベンチャー各社は診療内容を限定したり、対象を2回目の受信者に絞ったりするなど手探りの状態で事業を始めている。このためシステム開発大手はまだ参入に慎重なようだ。業界では「大手は詳細なルールが固まる前のリスクを懸念している」との見方もある。当面はベンチャー企業の先行が続きそうだ。

 

さいごに

「遠隔診療」市場が賑わいを見せるのは、IT関連システムの進化や低価格化が進んでいることも背景にある。しかしながら、課題はまだまだ山積みだ。新しい試みには、法律を中心とした課題はつきものだ。保険の適用範囲など、詳細に詰めなければいけない問題も多いという。しかしながら、このようなサービスの普及は、人々の”よりよい生活”に紛れもなく寄与することになる。役に立つサービスは必ず発展する。今はベンチャーが先行しているが、これから数年後には大手の参入も始まり、業界規模も大きくなっていくことだろう。その時に改めて今日のエントリーを見返してみたい。