快適睡眠法をスタンフォード式に学ぶ
一番売れている睡眠解説本
最近やたらと本屋で目にする本。前々から気になっていたので読んでみた。
スタンフォードは睡眠科学の第一人者を多数輩出する名門。そのスタンフォードの様々な文献の中から、有効なメソッドを抽出し、簡単にまとめたのが本書。
この本の冒頭で紹介されている良質睡眠のための秘訣は、ずばり「最初の90分を深く眠ること」。
眠りのサイクルが「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の繰り返しであることは有名だ。
「ノンレム睡眠」は深い眠りで、この状態の人はなかなか起きない。無理やり起こすと目覚めが非常に悪い。一方で「レム睡眠」は浅い眠り。割と現実的な夢を見る。覚醒に繋がる状態で、急に起こされても目覚めがよい。
ちょうど下図のイメージのとおり。
グラフを見ると、眠り始めに大きな「ノンレム睡眠」がおとずれることが分かる。この「最初の90分間」のノンレム睡眠が、睡眠全体の鍵を握っている。
睡眠障害が顕著に発現するうつ病や統合失調症の患者は、最初の90分に脳が覚醒して深い眠りに入れないという。逆にこの90分に良質な睡眠を取ることができれば、トータルの睡眠時間が短くても、日中の眠気に襲われることはないそうだ。
では、この「最初の90分」の眠りを改善するためにはどうすればよいのだろうか。
良質な睡眠のキーは「熱放射」
まず、体の体温調節の仕組みを知っておく必要がある。
人間の身体には、環境変化の影響を受けにくい「深部体温」というものがあって、これを下げてやることで深い眠りに入ることができるそうだ。
ポイントは「熱放射」。
「熱放射 」とはその名のとおり、手足の表面から熱が発散される現象のこと。
体の外側の温度を上げてやると、血管拡張によりこの「熱放射」が増え、深部体温が低下しやすくなる。つまり、スムーズに深い眠りに入ることができる。
寝る前にぬるま湯に入ったり、足湯につかるのがおすすめだ。風呂上がりには熱放射が促され、深い眠りを得やすくなる。ただし、しっかり暖まってしまうと深部体温が上がってしまうので注意。ぬるま湯や足湯がいいのはこのため。
寝る直前の「腹式呼吸」
睡眠中の「呼吸」も重要だ。
いびきは口呼吸により引き起こされる。ひどい人では、睡眠時無呼吸症候群にも陥っているとのこと。
これを改善するには、鼻呼吸を促す「腹式呼吸」が効果的。
腹式呼吸は、もともとヨガの基本呼吸として使用されているため、リラクゼーション効果が非常に高い。寝る直前に腹式呼吸を実施することで、寝ている間の呼吸法が改められる。睡眠までの時間も短くなり、簡単に入眠することができる。
睡眠の質が変わった実感あり!
上記を実践することで、最初の90分の眠りが深くなり、全体睡眠が最適化される。
この本にはもっといろんなことが書かれているのだが、自分の記憶に残っていて実践したものは、寝る前に「ぬるま湯に入ること」「腹式呼吸をすること」の二つだ。
実際、これだけで睡眠が十分に改善された。パートナーに確認したところ、腹式呼吸を意識的に実施した日は、いびきがないとのこと。寝起きも爽やかだ。さらに、ぬるま湯に15分ほど浸かって眠ることで、翌日は眠気もなく、すっきりした感じで1日を過ごすことができた。
寝る前にほんのちょっとの工夫をするだけでこんなに効果があるのだから、実践する価値ありだ。ノンレム睡眠やら深部体温やらの専門用語は忘れても、寝る前に「ぬるま湯に浸かること」と「複式呼吸をすること」だけは覚えておいてほしい。
「目的を持った読書が人生にポジティブな影響を及ぼす」。そんなことを改めて実感することができた一冊だった。