kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞関連の時事ネタを中心に書評ノートを公開中。小説や実用書、自己啓発本についてもたまにエントリー。

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又吉の第二作「劇場」〜ダメな男とそれを支える女性の悲しすぎる恋物語〜

売れない演出家と女優志望の女性を描いた恋物語

又吉の小説第二作「劇場」を読了した。

 

作品全体に散りばめられている主人公のクズさ。ヒモ男とはこういうものなのか。自分のことは棚に上げ、人の揚げ足を取り、情けない嫉妬と謎の羞恥心に苛まれ、動けない。クズ人間の骨頂だ。「あっこいつほんとにヤバい」と思う描写がいくつかあった。

 

全く共感できない要素が大半である一方で、物語を読み進めていく中、どこか自分にも通じる部分があることに気付いた。

 

それは、人間が根底に持つ自分本位さ。客観的にみれば明らかにアウトな行動であっても、それとない根拠付けをし、ストーリーを仕立て上げてしまえば、主人公の頭の中、つまり読者の視点からは「そんなもんか」と合点がいってしまうのだから不思議だ。

 

本書では、そのような主人公と世間の感覚とのズレが、取り巻きの登場人物たちからの的確な指摘よって容赦無く露呈していく。

 

この話は、又吉の実体験に基づいている。ものすごく心の優しい人間にしゃぶりつき、結果的に精神を病ませてしまう悲しい物語。

 

彼はどのような気持ちで文章を紡ぎ出していたのだろうか。