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kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

運を支配する

書評

今やメガベンチャーへと成長し、様々なヒットコンテンツを世に送り出すIT企業「サイバーエージェント」CEOの”藤田晋”さんと、麻雀界の無敗伝説で有名な「雀鬼会」会長の”桜井章一”さんの共著となる一冊。

 

ビジネスや麻雀、そして人生においても必ず”ツキ”と呼ばれる「流れ」のようなものが存在する。それを日常のあらゆる場面でどのように感じ、活かしていくのか、桜井さんご自身の見解が述べられた後、藤田さんがご自身の経験を踏まえ、ビジネスマン向けに分かりやすくその内容を解説する、というスタイルで構成されている。

 

確かに周りの人間を見ていても、いつもなんとなく運がいい人、いわゆる「持っている人」はいる。決して科学的ではないが、確かに人生において”ツキ”というものは存在しているのだと思う。目に見えないその”ツキ”とどのように付き合っていくのか、この一冊を読んで少しヒントを得たような気がする。

 

 

 

内容抜粋

 

藤田晋

「洗面器から最初に顔を上げたやつが負ける」。忍耐力をもって、ここまでやってきたと思っている僕にとっては腹に響く言葉です。

 

そもそも力んで仕事がうまくいかないタイプは、自分に執着している人が多い。「”俺が”この仕事を取るんだ」とか「”自分の”目標を絶対に達成してみせる」といった感じで、”俺が””自分が”というモードが全面に出ているのです。反対に自分のことより全体のことを考えている人、たとえば属しているチームが目標に到達することを念頭に置いて頑張っている人は、不思議と力みがないものです。

 

勝ちたいと思いながら、力みをとる。つまり、頭の片隅に勝ちたいと思いをしまって、忘れたかのように淡々とやるべきことをやる。それが結果を出すかどうかの、大きな分かれ目なのだと思います。

 

ビジネスというものには、元々はっきりした答えがあるわけではありません。答えのなかったところに誰かの情熱や努力によって答えがつくられることで、たいていのビジネスは成り立っているのです。

 

まず自分から「答えは必ずある」と熱狂するところから、すべては始まるのです。

 

パニックになるのは、起こったトラブルが想定外の大きさだからです。どんなトラブルであれ、それが想定の範囲内であれば、頭の中が真っ白になることはありません。そのためには、あらゆることを予め想定しておくことが必要です。

 

「キレたらそこでゲームオーバー」。この言葉を覚えておいて、ギリギリの状況になっても、一瞬も自分を見失うことのないようにしましょう。

 

経営であれば、入口は直感でも、きちんと左脳で論理的に分析したり整理したりする必要があります。それを支える知識やデータも必要です。それらを駆使して、最後はやはり最初の直感を信じられるかどうかです。

仕事や人生、麻雀など人の心理が介在するものは、自分の頭で考えて合理的に判断できることばかりではありません。迷ったときほど間違えやすいものです。僕は経営では直感を信じると同時に、「迷ったら決断しない」というふうに決めています。

 

成功したのは、流れのタイミングが見事に合っていたとか、自分の年齢的な要素が大きくものをいったとか、かなり恵まれたポジションにいたとか、さまざまな偶然の条件が重なってのことです。こうした条件は、時間の推移とともにどんどん変化していきます。そうすると当然ながら、同じ条件がそろった成功パターンでも再びうまくいく確率は非常に小さくなります。

 

ありがたいことに、僕は人から「藤田はブレない」といわれることが多いです。いまでこそ自分の強みはハートの強さだと自負していますが、僕も昔から孤独や批判に強かったわけではありません。それでも心が強くなったのは、孤独な局面を幾度も経験し、数え切れないほどの批判に耐えてきたからです。ちょっとやそっとのことで揺れない強い心というのは、仕事をしていく上で協力な武器になります。簡単に揺れることがない心には、確固とした軸があるからです。

 

調子を崩しているときや苦境のときは、真っすぐな素直さや勇気があれば救われると思います。

慌てず丁寧にやる。全体感を持つ、素直に自分を見つめる、こうしたことが流れが悪いときに仕事をする上での僕の基本姿勢なのですが、とりわけ丁寧にやるということは、とても大事だと思います。大きなミスをしたときでも、丁寧に気持ちを込めて仕事をしていれば、自然と気持ちは落ち着いてくるものです、すなわち、平常心に戻れるのです。平常心になれば、自分に素直になって、全体を広く見ることも可能になります。悪い流れであっても、丁寧に、丁寧にやっているうちに、流ればいいほうへ変わっていくものです。

人間の深みとは、そういう逆境の積み重ねによって出てくるものなのだと思います。逆境に遭遇したら、自分という人間に深みを与えてくれるチャンスととらえて、前向きに付き合っていくといいと思います。

 

厳しいときこそ、平常心を失わず、「なんとかなる」と思って時間をやり過ごすことが、運を取り戻す上でも大事なことなのです。

 

ひたすら人に何かをやってあげながら、まったく見返りを求めない人は、何かあったときに不思議とみんなが手を貸してくれたり、回り回って思わぬ形で大きく自分に返ってきたりするものです。多くの人が「あの人はいい人だ」「何かあったら力になりたい」と思うようになり、いろいろなかたちで協力や応援をしてくれるのです。すごく成功している人には、このタイプが多い気がします。

 

仕事ができる人は、準備を抜かりなくやる、そこに例外はないと思います。以前、ネット上の誰かの発言で、ビジネスマンには3つの進化過程があると書いているのを見かけました。最初は「自分を相手にどう見せたいか」。これは一番レベルが低い。自分のことにしか目が行っていないので、プレゼンで何かを伝えたい、売り込みたいと思っていても、相手には伝わりません。そこから一つ進化すると、今度は「相手の立場を想像」し始めます。さらに進化すると、「相手から見た自分を想像」できるというのです。

 

桜井章一

私には修羅場という絶対的な窮地をむしろ自分を試す場として歓迎するような感覚があったからだと思う。修羅場においてもっとも大事なのは、自分を失わず、そこで主導権を取ることである。主導権を取れば、どこかに抜け道は見つかるもの。結局、修羅場をつくるのも自分の意識なのだ。

 

何にでも集中しすぎる癖をつけると、マイナスの面も現れることを知っておくべきだと思う。集中しすぎがいい結果だけを導くものではまったくないことは、世の中を見渡せばすぐわかることだ。たとえば学生時代に勉強をやりすぎて、あまり人間性が育っていないまま社会に出て苦労する人は少なくない。あるいは落ち込んだり、怒りにかられた人がその感情に集中しすぎると、健全な生活になかなか戻れなくなってしまう。

 

スランプのときは、その状態から目を転じてまったく別のことを考えたり、やったりするといい。たとえば、散らかっている部屋の掃除を徹底的にやったり、旅行へ行って環境を変えてみてもいいだろう。スランプのときは流れがよくない状態なので、そこに「間」を意識的に置くのである。

 

心が囚われる前でスイッチを切る。連想を止める。仕事でも生き方でもネガティブな連想に囚われがちな人は、そんな”止める”習慣を身につけるといいと思う。

 

勝負の流れには努力しなくてもスムースに進むところがある一方、激しく渦を巻いていたり、濁流になったり、流れを乗り切るのに全力で挑んでいかないといけない局面が必ずあるものだ。私はそういった厳しい局面を何よりも好んだ。だからといって、そのときに「きついな」「辛いな」と感じないわけではない。だが、根底には「厳しさ」を敵と思わず、味方だという思いがあったからこそ、逆境をしのいでこられたのだと思う。

 

「〜しなければならない」とか「〜すべきだ」といった思考癖があると、悩みを突き詰めて考え、それにがんじがらめに囚われてしまう危険に陥りやすい。

 

私の人生にはいつも「風」が吹いていた。では「風」とは何なのか?自然の感覚に委ねたときに生まれる流れのようなものとはいえるだろう。もし私が「風」に従わず、頭で「こっちに進むべきだ」とか「こう考えるべきだ」などといつも判断していたら、人生はいまとはだいぶ違うものになっていたに違いない。「なんとかしなきゃ」ではなく、「なんとかなるさ」という感覚。「風」はそういう感覚を運んでくれる。

 

「準備、実行、後始末」が大事である。準備をおろそかにしては実行はうまくいかないし、実行がうまくいっても後始末をきちんとしなければ、次の準備で抜かりが生じる。