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kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞関連の時事ネタを中心に書評ノートを公開中。小説や実用書、自己啓発本についてもたまにエントリー。

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COP21(パリ協定)の全まとめ〜日本経済新聞2015年12月15日〜

日本経済新聞

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今更だがCOP21・パリ協定についてまとめてみた。かなり長くなったがこの記事を読んでもらえれば、パリ協定の経緯から具体的な合意内容までのすべてを把握できる。是非一読していただきたい。2015年12月15日の日経新聞の記事を題材とした。

 

パリ協定〜歴史的な「全員参加」〜

第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で2020年以降の地球温暖化防止の新たな枠組みとなる「パリ協定」が採択され、国際社会は「全員参加」による温暖化対策に動き出す。1997年採択の京都議定書は一部先進国の参加にとどまったが、パリ協定は途上国を含め条約に加盟するすべての国・地域が責任を負う。ただ各国の参加を優先するあまり、目標達成できなかった場合の規定などがあいまいで、実効性に課題を残した。 

COP21(パリ協定)概要

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先進国・新興国・途上国、全員参加を実現

「野心的で繊細、バランスのとれた協定にする」。議長国フランスのファビウス外相の期待はほぼ形になった。パリ協定は対立してきた先進国と途上国の溝を埋め、「共通だが差異ある責任」を負わせた点で歴史的合意といえる。日米欧などの先進国は2025〜30年までの温暖化ガス削減幅を数値目標で約束し、中国やインドはGDP当たりの排出量の改善などを約束した。先進国、新興国、途上国がそれぞれ違う指標で目標を設けることにし、全員参加を実現した。努力目標とはいえ「気温上昇を産業革命前よりも1.5度以内に抑える」と定めた。今世紀後半には温暖化ガスの排出量を森林などが吸収する量と均衡する水準まで減らす長期目標を掲げ、5年ごとに各国の目標を見直す規定も盛り込んだ。京都議定書に比べ発効の要件も緩く、採択から8年かかった京都議定書より早くなる公算が大きい。

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課題

ただ、温暖化の進行を止めるにはパリ協定は出発点にすぎない。各国の目標の上積みが欠かせない。条約事務局によれば、参加国すべてが今の目標を達成しても、地球の平均気温は産業革命前より3度近く上昇する。協定は実効性ではなお課題を残した。目標達成をチェックする仕組みとして各国が温暖化ガスの詳細な排出データを公表し、第三者が検証する仕組みづくりで合意している。だが全員参加を優先したため、目標を達成できない場合の規定はほとんど議論されなかった。目標未遂なら罰則を科すといった規定には、先進国、途上国ともに反発が強い。今後の交渉では「目標の確実な達成を促すための軟らかい規定」(環境省)になる公算が大きい。新興国や途上国に着実な削減を促すには、先進国の賃金で温暖化ガスを減らした場合、実績の一部を先進国に還元する仕組みづくりも重要だ。削減コストは先進国より途上国の方が安く、地球全体の排出を減らす観点からも理にかなう。日本は2国間で事業を始めているが、国際的なルールとして広める必要がある。

 

日本政府の取り組みについて

日本政府は温暖化ガスを2030年までに2013年比26%減らす目標を定め、工場やオフィスの省エネ強化、エコカーの普及などを掲げる。26%を達成するだけでも1970年代の石油危機後と同程度の厳しい省エネが必要になる。協定に盛り込んだ5年目の目標上積みができるのか。温暖化対策の強化には「痛み」を伴う。社会全体で分かち合うには、企業間で温暖化ガスの排出枠を取引する制度や新たな炭素税導入などの議論も避けて通れない。

 

米中、合意牽引

COP21で2015年12月12日、パリ協定を採択できたのは、温暖化ガスの二大排出国の米国と中国が積極姿勢に転換したことが大きい。もともと温暖化対策に積極的なEUと合わせ、米中の足並みがそろったことが合意を後押しした。議長国フランスは調整に奔走した。

フランスが調整に奔走、会期延長も粘り強く説得

 合意の機運が高まったのは2015年9月下旬、米国での米中首脳会議にさかのぼる。「COP21を成功させよう」。オバマ米大統領と中国の習金平国家主席は握手を交わした。これまで世界の気候変動対策に背を向けていた中国は、その場で2017年から排出量取引制度を導入し、途上国向けに31億ドル規模の支援の枠組みをつくると発表した。習氏の記憶にあったのは2009年、コペンハーゲンでのCOP15の苦い経験だ。中国代表は「我が国は途上国」と開き直り、削減義務受け入れを拒否。世界から非難を受けた。「環境優等生」への転換の背景には、環境問題で米国と歩調を合わせ国際協調をアピールする狙いがあったとみられる。政権の遺産を打ち立てたいオバマ氏はもともと温暖化対策に意欲的だ。中国の温暖化問題への積極姿勢が鮮明になったことで、「各国の交渉官の雰囲気は非常に良くなった」(EUの交渉官)。一方でEUは11月半ばの首脳会議でアフリカ各国と気候変動分野で協力することで一致。パリ協定の採択に向け、交渉は加速した。この場を逃さなかったのが議長国フランスだ。オランド大統領は11月初旬に中国に飛び、習氏から「(排出削減目標の)5年ごとの見直しに賛成する」との言質を引き出した。同月下旬にはワシントンでオバマ氏と会談し、COP21で合意すると一致した。2015年11月30日。COP21初日には、約150カ国の首脳が参加した。同月13日に起きたパリ同時テロは、世界を一致集結させた。オランド氏は「温暖化とテロの2つの問題に打ち勝てねばならない」と演説した。だが各国の利害は対立し、前半の専務レベルの協議は進まなかった。インド交渉団は「先進国と途上国の責任の明確化が不十分だ」と批判した。途上国からも先進国からも、資金支援や長期目標に関して異論が相次いだ。「初日の結束を思いだそう」。議長を務めたファビウス外相は必死に訴えた。最終日の予定だった12月11日。暗礁に乗り上げた交渉を救ったのはやはり米中だった。オバマ氏と中国の習氏が電話協議し、COP21の合意に向け協力することで改めて一致。他国に米中協調をアピールした。ファビウス氏は会期の1日延長を決断。会場のあちこちの小部屋では、各国代表団にうよる小グループの密談が始まった。部屋から部屋へと走り回るのはファビウス氏だった。「この表現ならどうか」「この部分は受けいれてほしい」。代表団を粘り強く説得。12月12日午前11時50分すぎ、予定時間から遅れて会場に姿を現したファビウス氏が抱えてきた議長案を公表すると、各国代表は立ち上がり拍手で応えた。採択の木づちが鳴ったのは同日午後7時26分だった。

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米中協力で実績を作るも、米内部では早くも対立?

COP21を薄氷の合意に導いたのは米中の政治決断だ。だが早くも米国では共和党が協定に反対する姿勢を見せ始めている。米国は協定を順守するのか。協定の実効性には不安もくすぶる。パリ協定の合意についてオバマ大統領は12日の声明で「米国の指導力の成果だ」などと自画自賛した。オバマ大統領にとって、COP21での合意は残り1年あまりの任期で最後の大仕事だ。だがその声明の直後、米共和党の大物ミッチ・マコーネル議員はこう切り捨てた。「オバマ氏は守れない約束をした。(2016年11月の大統領選挙後には)シュレッダー行きだろう」。大統領選で共和候補が勝てば、米国が掲げる自主削減目標の継続は危うくなる。前例がある。2001年、共和党のブッシュ大統領は、クリントン前政権が署名した京都議定書からの離脱を宣言。京都議定書の結果次第では、新協定の「ご破算」になりかねない。

 

日本の識者の見方

米中の参加、意味大きい〜小宮山宏三菱総合研究所理事長〜

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先進国だけでなく途上国も参加する気候変動の枠組が合意できた点は評価できる。温暖化ガスの削減目標は法的なしばりがあれば望ましいが、二大排出国の米国と中国が参加できたことの方が意味が大きい。温暖化を防ぐために、各国は今後、省エネルギーや、再生可能エネルギーの活用などを進めていく必要がある。合意の背景には、この10年間でこうした取り組みへの理解が広まったことがある。日本でも、今後5年程度で温暖化対策を前進させることに理解を示す人が増えるだろう。政府も企業や市民の活動を後押しする施策を強化すべき。

 

省エネ技術、世界に貢献〜進藤孝生・新日鉄住金社長〜

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世界の国々が自主目標を提出するボトムアップ型の枠組みができたのは評価できる。温暖化対策は経済活性化との両立が欠かせない。欧州など先進国の限られた国による京都議定書は、世界の温暖化問題に十分対処できる枠組みとはいえなかった。パリ協定は全世界が参加することに大きな意義がある。日本の鉄鋼業は自動車の軽量化や燃費向上につながる鋼材の開発に加え、日本で培った省エネ技術の海外展開にも重点的に取り組む。省エネ技術で海外貢献することを、世界は日本の産業界に期待している。