kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞関連の時事ネタを中心に書評ノートを公開中。小説や実用書、自己啓発本についてもたまにエントリー。

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久しぶりに京大に行ったら吉田寮の入寮パンフレットをもらった

数年ぶりに訪れた京大で吉田寮の勧誘を受けた

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臨月に入った嫁さんが友人の結婚式に参加するというので、道中付き添うことにした。披露宴会場は、京都の川端通り沿いで、今出川通りと丸太町通りのちょうど真ん中あたりに位置する。

 

かつての私の下宿先は目と鼻の先。嫁さんが式に出席中、学生時代の思い出を噛み締めながら周辺を散策していると、ふと母校が懐かしくなり、百万遍交差点隣の京都大学吉田キャンパスに足を運んだ。

 

道中やたらと人が多いなと不思議に思っていると、偶然にもその日は京大の二次試験当日であった。興奮冷めやらぬ面持ちでやたらとハイテンションな受験生を尻目に、いつかの自分も緊張で胃が張り裂けそうになりながら試験に臨んだことを思い出し感慨に耽っていた。

 

卒業から久しく、さすがに受験生にも見えなくなったのだろう。生協のパンフレットや賃貸マンションのビラを渡されることもなく、しばらく一人で学内を周遊。名物の立て看板やコスプレイヤーが現役であることが妙に嬉しく、気分があがってくる。

 

しばらくして本部キャンパスから吉田南キャンパスに向かうと、折田先生像の奥で2匹の孔雀が私を出迎えてくれた。

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このカオスな感じ、嫌いじゃない。ぼーっと孔雀を眺めていると、おぼこい女子学生から「もしよろしかったら」と分厚い冊子を手渡された。特に拒否する理由もないので受け取ってカバンにしまった。後で改めて目を通して気づいたのだが、その紙の表紙には「吉田寮入寮パンフレット2018」と印字されていた。

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京大のキャンパス内で見向きもされなかった自分を歓迎してくれたのは、奇しくもあの「吉田寮」であった。

 

現存する最古の学生寮吉田寮

京都大学吉田寮をご存知だろうか。京都で学生生活を送った経験がある方ならば大なり小なり知っているだろう。信じられないくらい年季の入った化石のようなその佇まいからは、有形文化遺産にも引けを取らないくらいの圧倒的な存在感を感じ取ることができるだろう。京大をカオス足らしめる建築物。

 

家賃が半端なく安いとてつもなくボロボロな学生寮。映画のロケ地として使用されたことも何度かある年季の入ったスパイシーな建物で、門をくぐればそこは異世界

 

数年ぶりに訪れた京大で僕を出迎えてくれた吉田寮。その入寮パンフレットの中身を紹介してみよう。

 

吉田寮は自治寮

冊子の大半は寮内の「自治」に関する記述であった。

 

吉田寮は自治寮で、学内運営から施設の維持管理まで、集団生活に必要な様々な要素を第三者に委託することなく、学生たちで議論して決めている。日夜、大小様々なディベートが繰り広げられているようだ。

 

寮内の組織は、厚生部・文化部・庶務部の大きく3つから成り立っている。寮生は何れかの専門部の局・係に属さなければならないそうだ。

厚生部の詳細がパンフレットに記載されていたので紹介してみよう。

 

厚生部の機能は生活水準の維持である。清掃局(大掃除の指揮)、石鹸局(石鹸などの補充、伝染病対策)、衛生局(シャワー室と洗濯機の管理)、補修局(寮内設備の破損箇所の把握と補修)、リサイクル局(リサイクルに関する業務全般)、消防局(防火対策や避難訓練AED講習)、薬品係(共用薬箱の管理と補充)、備品物品管理局(大学から支給される備品・物品の管理)からなる

 

とのことだ。今日び伝染病対策が謳われた寮規定があるだろうか。そもそも「石鹸局」というシュールさを体現する組織名称。たまらない。

 

こんな感じで寮生はそれぞれが様々な役割を担い、かつ好き勝手やっている。冊子の中には現役寮生やOBの体験記が載っているのだけど、これがなかなか面白い。私が京大在学時の吉田寮生といえば、一般教養の講義をジャックして寮祭の宣伝をしたり、鴨川で水泳大会をやったり、寮で孔雀を飼っていたりと、どちらかというと冷笑の対象となっていた。しかし、今振り返ってみれば、あの頃の自分はなぜ、彼らのようにぶっとんだことをしなかったのだろうかと後悔の念が込み上げてくる。人目を気にせず、空気を読まず、気の合う仲間とはちゃめちゃなことができるのは学生時代だけなのだ。

 

吉田寮の例年のイベントの一つに寮生による「ヒッチハイク」がある。上級生が下級生を車で遠方の田舎に連れて行き、適当なところで降ろす。下級生はヒッチハイクをして寮まで戻ってこなければならない。当然毎年様々なドラマがある。すごく楽しそうだ。こういうことを体験しておけばよかったなーと、社会人になった今しみじみと思う。

 

 

 

吉田寮の入居者募集の停止

そんな吉田寮にも避けては通れない大きな課題がある。施設の老朽化、耐震対策だ。このご時世、吉田寮もご多分に漏れず、深刻な強度問題に直面している。大学側はついに入寮生の募集を停止する意向を発表した。

 

寮生たちはこれに猛反発しているようだご、時代の大きな流れには逆らえないだろう。かたちあるものはいつか滅びる。しかしながら、吉田寮がきれいで清潔な空間に一色されてしまえば、かつてのようなカオスな魅力が低減することは間違いないだろう。核は残しつつ、パーツを組み替え、緩やかにアップデートされていくことが理想なのだが、なかなかそう簡単にはいかないようだ。

 

この日本からまた一つ、「おもろ」が消えていこうとしている。とても寂しいことだ。この先、最古の学生寮がどのような結末を迎えるのかは分からない。しかしながら、脈々と引き継がれてきたそのアウトローの精神がいつまでも失われないことを京都大学の卒業生として願うばかりである。

 

京都はやっぱりいいところだ。