iPS細胞を利用した製薬、再生医療が進む!〜日本経済新聞12月16日〜
iPS細胞を利用した製薬、再生医療が進む!
あらゆる細胞に変化できる「万能細胞」のiPS細胞。ノーベル賞受賞で一躍時の人となった山中伸弥教授は、現在も第一線で活躍している。我が母校の誇りである。
ということで、新年一発目のエントリーでは、iPS細胞などの新技術を利用した新薬開発の実情を取り上げる。
対象の記事は日経新聞2015年12月16日「製薬、再生医療が主戦場〜武田・京大のiPS主戦場〜」。
日経記事要約
京大との提携
製薬各社は再生医療の分野へ積極投資をする。武田薬品工業と京都大学は2015年12月、巨額を投じる共同研究に着手した。アステラス製薬は同分野に強い米社を500億円弱で買収する。
各社は次世代の治療法の中核技術になる可能性があるとみており、成長市場の獲得へ向けた提携や買収など、陣営づくりが加速してきた。
武田と京大iPS細胞研究所はがんや心不全、糖尿病など6つの疾患領域でiPS細胞を使った治療法や創薬の研究を始めた。
京大と組むのは武田だけではない。大日本住友製薬も京大の高橋淳准教授らと協力している。iPS細胞を使い、神経難病であるパーキンソン病の治療法を開発するという。
再生医療の研究も進む〜米企業の買収〜
iPSの京大を軸にした提携が広がる一方、再生医療に力を入れる米企業と組んで対抗しようとの動きも出ている。
富士フィルムは、米国の再生医療ベンチャーを300億円強で買収した。同社はiPS細胞を安定して量産できる技術がある。
アステラス製薬が買収するオカタ・セラピューティクス社は、万能細胞の一種でヒトの胚から作るES細胞を使い、加齢黄斑変性という病気を治療する技術を開発している。既に臨床試験を始めた。
再生医療の研究は日本が競争力を維持する数少ない領域。実用化で先行できれば、国内大手の競争力向上につながりそうだ。
再生医療の市場が広がるには、製薬会社が多額の研究開発費を回収できる一方、多くの利用者が使いやすい価格設定が欠かせない。
再生医療の普及などを目的にした医薬品医療機器法が施行され、このほど第1号製品が保険適用の承認を受けた。テルモと中堅製薬会社のJCRファーマが開発した2つで、それぞれ心不全治療と骨髄移植時の合併症に使う。いずれも標準的な治療に使う場合の価格は1400万円前後。これはメーカーの希望価格を下回ったよう。
テルモは「数年間は赤字で、中長期的にプラスマイナスゼロになれば」と単独の事業としては厳しいとみる。
一方、専門家からは「高すぎる」との声も。利用者は保険などで負担が緩和されるため実際には数十万円程度の出費ですみそう。だがその分、国の財政を圧迫するとの指摘がある。
感想
再生医療に関しては期待が寄せられる一方で、記事で述べられているように価格設定の問題がある。
巨額の投資を回収しなければ事業として成り立たない。治療を必要とする個人や機関と研究機関とのギャップをどのようにして埋めていくか。
課題は多いが、長期的に見ればこの研究の大波は多くの人を救うことになるだろう。