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kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

【完全保存版】京都人がおススメする日本を再発見するための書籍(言葉・文学編)

DiscoverJapan ✖️ 京都人 = 日本の言葉と文学の素晴らしさを表現 

前回に引き続き、2015年12月版DiscoverJapan(ディスカバー・ジャパン)の「ワクワクする本」特集をテーマにエントリーする。今回は、生粋の京都人がおススメする日本の「言葉・文学」編。京都人の感性を活かし、エッセイ集を中心に日本文学の素晴らしさを堪能できる書籍十冊を紹介してくれている。

 

 

 

京都人おススメの日本を再発見できる本【言葉・文学編】

■火の誓い

独自の陶芸美の世界を切り拓いた河井寛次郎が、美しいものの背後にあるものを求めた歩みを詩情豊かな文章で記している。陶芸作品同様に言葉にも力強さを感じる。

 

■貧しき信徒

大正時代の詩人、八木重吉の詩集。肺結核を患う中で紡いだ言葉が綴られている。作者の死後出版された。不遇の運命を受け入れ、決して感傷に浸っていないところが素晴らしい。暗い中での美しさを感じる日本独特の歌集。

 

中谷宇吉郎随筆選集

作者は物理学者と随筆家という二つの側面を持つ。「雪を作る話」などの科学随筆や、師・寺田寅彦との思い出など、随筆を読む楽しさを味わえる。「雪は天から送られた手紙である」という一文が印象的。

 

■夜の紅茶

著者が、「漱石とその時代」第一部、第二部を執筆していた前後の時期に書き溜めた一冊。日本の情景をうまく表現している。書き出しの文章だけで、その先を読んでみたくなってしまう。

 

細雪

文豪谷崎潤一郎が執筆した有名な一冊。4人姉妹の鶴子、幸子、雪子、妙子が織りなす人間関係の中に、昭和の上流社会の生活の様を四季折々に描き込んでいる。京ことばの表現がうまく勉強になる。

 

■いきの構造

江戸の粋をうまく表現している一冊。文章のリズムやストーリーの流れが印象的。

 

茶の本

ニューヨークの一書店から英文で出版された一冊。西洋人に「茶」を理解させるために、日本の精神面を見事にとらえている。お茶の指南書という範疇に留まらず、建築、庭、陶芸など日本文化のすべての根源にあるといわれる”お茶の心”を解き明かしている。

 

■眠る盃

「荒城の月」の「めぐる盃かげさして」の一文を「眠る盃」と覚えてしまった少女の回想を描いている。ユーモラスでありながら女性ならではのきめ細やかさ、強さを言葉に表現している、エッセイのお手本とも呼べる一冊。

 

■私の台所

昔ながらの生活の知恵を大切にしようという想いから、古きよき時代の暮らしぶりが描かれている。江戸っ子の潔さを言葉でうまく表現している点に脱帽。

 

■雪舞い

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随筆集 雪舞い

 

古典文学、能、庭、陶磁器、着物、音楽、絵など、日本の美の原点を探った著者が紡いだエッセイ集。厳しい文章が多いが、所々に人間らしさがにじみ出ていて、美しさに尽きる妙詩。食に関する文章片言も非常に素晴らしい。

 

図書推薦人

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柏井壽
京都府生まれ。京都市北区で歯科医院を開業。歯科医院を開業するかたわら、京都関連の書籍や旅紀行のエッセイを執筆している。著書に「極みの名旅館」「鴨川食堂」など。「小説を読むと同業者として、この表現はもっとこうした方がいいのでは?と厳しい目で見てしまうこともあります。対してエッセイにはストーリー以上に、言葉一つひとつの美しさを見つける楽しみがあるんです」とのこと。
今回彼が選書した10冊の作者は、小説家を生業としていない人がほとんど。「いわゆる名作はあえて外しました。いろいろな本を読んで自分なりに光るものを見つけてほしいですね」

 

さいごに

私も学生時代に京都に6年間住んでいた。京都には多くの文化遺産があり、日本文化・文学に触れる機会が多かった。関東やその他の関西地方にはない、独特な時間が流れている。今回の図書推薦人である柏井さんは生粋の京都人。その京都人の感性に響いた書籍十冊のうち、少なくとも一冊は読んでみようと思う。