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日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

スマホで配車「ライドシェア」という新たなサービスの展望〜日本経済新聞12月1日社説〜

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ライドシェアという新しい交通手段の在り方

2015年12月1日の日経新聞社説にて、「ライドシェア」という自家用車による人の運送サービスが取り上げられていた。

 

先駆的でなかなかおもしろいアイデアだ。

 

興味深かったので、私が個人的に調べた内容を交えて本エントリーで紹介しようと思う。

 

 

 

ライドシェアとは?その現状

ライドシェア解禁の機運が高まる

公共交通の貧弱な過疎地などで、自家用車を使って有償で人を運ぶ「ライドシェア」を解禁する機運が高まっている。

 

タクシー業界や国土交通省からは反対論も強いが、タクシーのない公共交通の空白地帯を対象に解禁を検討している状況だという。

 

「ライドシェア」で成功したウーバーテクノロジー社

その背景には、スマホの普及とIT技術の進展がある。

 

ライドシェア業界には、既に先駆者として米国で大躍進を遂げている「ウーバーテクノロジーズ社」というベンチャー企業が存在する。

 

同社は、学生や主婦が暇な時間に自分の車を運転して乗客を運び、対価を受け取る事業モデルを確立した。客を乗せている時は運転手を評価する制度のおかげでタクシーよりも運転マナーは良い。そのサービス網は、現在世界各地に広がっているという。

 

ウーバーは既に日本にも進出しており、東京都内でサービスの展開に着手した。発祥の米国では既存のタクシー業界を駆逐するほどの勢いである。

 

しかし、大きな変化には必ず痛みが伴う。ウーバーの大躍進の一方で、それに伴う弊害も生じている。米国都心部ではハイヤー車による交通渋滞が深刻化しており、女性客に対する性的暴力事件なども発生している。

 

ITを利用したネットワークと、スマホという便利な携帯機器の登場により、ヒトとモノの繋がりが格段にスムーズになった。ウーバーのライドシェアサービスはその時代の流れを上手く捉えた成功事業の典型の一つと言えるが、その背景にはそれなりの問題も潜んでいるようだ。

 

日本での参入障壁

では、日本でライドシェアを導入するにはどのような点に注意すべきなのだろうか。参入障壁という角度から考えてみよう。

 

安全性への懸念は?

規制緩和への反対論として、検討を要するのが「安全性が脅かされる」という主張である。しかし、国交省によると、一般の人がハンドルを握る「自家用有償」のほうが、タクシーよりも事故の発生率がはるかに低いという。私個人の見解としても、タクシー運転手の方が一般人と比べて確実に運転が荒く、同乗者の安全に寄与しているとは言い難い。

 

ライドシェアを導入するにあたって、運転面での安全性というポイントはクリアできそうだ(少なくとも良識ある日本人がサービスを提供するなら)。

 

問題は「責任の所在」だ。

 

どんなに安全運転していようとも大規模にサービスを展開すれば必ずどこかで事故は起きる。事故発生時には、運転手はもちろんウーバーなどの仲介会社も一定の責任を負う必要があるだろう。先日取り上げた”自動運転車”然り、このグレーゾーンについて白黒はっきりした答えを導き出せなければ、サービスの全国的な普及は難しいだろう。

 

法の壁は?

日本では自家用車による営業行為は「白タク行為」として原則禁止されている。

 

この縛りを取り払い、ウーバーをはじめとした関連企業の参入を認めれば、高齢者の通院や外国人観光客の移動といった多様な需要に応えることができるだろう。

 

しかしながら発生し得るデメリットも鑑みて、導入方法については慎重に検討すべきだ。白タク行為がなぜ禁止されているのか、その原点に立ち直って制度を作りはじめる必要がある。

 

感想

おもしろそうなサービスであるが、国交省が制度導入に際して難色を示すのも理解できる。

 

ITを利用してヒトとヒトを動的に結び付けるサービスは、便利な反面、危険性を伴うからだ。タクシーの運転手が模範的とはとても言えないが、会社と法によって規制された業者なだけに抑止力も働く。

 

海外では、便利なサービスが矢継ぎ早に導入される反面、不祥事も多い。ウーバーテクノロジーの躍進はメディアで取り上げられる機会が多く輝かしく見えるが、彼らのサービスを通じて新たな問題が発生しているのも事実だ。

 

日本は、国民性ともいえるその”慎重性”をデメリットと捉えるのではなく、その特性を活かして誰もが納得するような制度の導入を目指してほしい。