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kaidaten's blog~書評ノート~

日経新聞の要約や書評を中心にエントリーしてましたが、最近はざっくばらんにやってます。

「しょぼい起業」を提唱するYouTuberの著書

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ショボい起業家「えらいてんちょう」

巷で話題の「えらいてんちょう」をご存知だろうか。YouTubeで「入ってはいけない宗教」を紹介する動画がバズって注目を浴びた人物だ。


宗教マニアが教える入ってはいけない宗教ランキングベスト5【2018】

宗教系の動画で有名になったものの、彼自身は、リサイクルショップ、学習塾、イベントバーの経営にコンサル業を併行して行う個人事業主で、色々マルチにやられているみたい。

たまにYouTubeに上がってくる動画見るんだけど、これがけっこう面白い。外見はスネ夫みたいなヒョロくて胡散臭い奴なんだけど、話してる内容を聞くと、一を聞いて十を知るタイプの天才肌であることがわかる。進めている事業は基本的に軌道にのっているようで、やっぱりどんな分野でも、成功する人ってちょっとぶっ飛んでてクレバーなんだなーと思ったり。

 

 

えらいてんちょうの本「しょぼい起業で生きていく」

さぁ、そんなえらてんが提唱するのが「しょぼい起業」。その名の通りお金をかけずにこじんまり始める起業のことらしく、とにかく初期投資を抑えることに徹している。このたび、その活動に注目が集まり、書籍が発売された。 

しょぼい起業で生きていく

しょぼい起業で生きていく

 

立ち読みでペラペラ本をめくっていると、「生活の資本化」の名の下に、 店舗に住みこむことで家賃実質ゼロ、とか、家で要らなくなった食器を店舗で利用することで費用削減、などの合理的なのかよくわからんけど、とにかく金をかけない起業法が紹介されている。

曰く、コンテンツが面白くて動線さえ確保されていれば、人は集まってくる、らしい。たしかに、彼が展開するバーは、居抜き物件そのもので、外装も内装もお世辞にも綺麗とはいえない。でも、イベントバーと銘打って、タブーとされる宗教系のイベントなどを敢えて積極的に開くことで人気を博し、リピーターも増えたという。熱狂できるモノがあって一旦アルコールが入れば、もしかしたら空間の質は関係ないのかもしれない。

それにこの方法はリスクが非常に低いので、撤退時のダメージも少ない。個人事業は博打要素が高く、当たる時は当たるけど、一旦時流から外れてしまえば閑古鳥、みたいな状況に陥りがち。そういう意味で、「しょぼい起業」は理にかなった起業メソッドなのかもしれない。私はやらんけど。

とにかく、発想の転換とはよく言ったもので、えらてんの活動には目から鱗なことが目白押し。「しょぼい起業で生きていく」一読の価値ありかもしれない。嘘。

 

【追記】意外と難易度高い「しょぼい起業」

その後えらいてんちょうはYouTuberとしての成功を機にビジネス手腕が世に広く知られ、ネットメディアで見かける機会も多くなった。実店舗の経営からフランチャイズオーナーに切り替えたことで時間も増え、余った時間で新政党の立ち上げまで行うというまさに破竹の勢い。

しかしながら、現在は持病の双極性障害に悩まされその勢いにも陰りが見えてきたよう。躁のときに手広く始めた活動が鬱時に手に負えなくなったとのこと。

加えて、しょぼい起業の看板となっていた「しょぼい喫茶店」の閉店、極め付けのコロナ堝によるフランチャイズの集客激減の影響が大きかったようだ。

なんだかんだいって、新手のサービス業は水物だ。えらてんメソッドによるイベントバー等の出店は一時期に急激に広がったが、その後撤退した店舗も多い。しょぼい起業で食いっぱぐれないためには、①圧倒的な集客力でロケットスタートを切ってマスに認知され、その後、②恒常的に人が来る「飽きられない仕組み」を構築する必要がある。

そしてこの②がそれなりに難易度が高かったりする。

えらいてんちょうはイスラム新興宗教の教祖をやっていた程のカリスマ性のある人物だったので、自然と人が集まり拡大するに至ったようだが、一般人にこのハードルはやはり高い。しょぼい起業は無駄なコストを抑えているので、一見さんがふらっと立ち寄りたくなるような店舗でない。良くも悪くも店主やサービス目当ての「場」として機能するタイプの店。こういう店は店主の人気がなくなったら終わり。沿道からの来客も見込めないため、文字通りの閑古鳥状態になってしまう。

結局必ずうまくいく起業法などない。店主の類稀な才能や魅力あるいは地道な努力により道開いていくもので、再現性100%なんてことはないのだ。この先もいろんなビジネスモデルが生まれては消えていくのだろう。