kaidaten's blog~書評ノート~

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日本の道路はどうやって作られるのか?

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道路の謎

お住まいの地域の道路を頭に思い浮かべてほしい。

 

交通量が多いのに車線数が少なく慢性的に渋滞が発生している道路がある一方で、歩道部分がバリアフリーされ自転車レーンなんかも設置された高質な道路が長々と敷かれていたりする。

 

高速道路と一部の有料道路を除くと、道路の整備主体は国や地方自治体。税金の無駄遣いの温床になりやすい道路事業に対して不信感を抱いている人も多いのではないだろうか。

 

では、日本の道路はどういうプロセスで作られて、どんな感じで管理されているのか。その内容を簡単にご紹介しよう。

 

 

 

 

道路に関する法律

いちからわかる道路管理の知識&雑学

いちからわかる道路管理の知識&雑学

 

導入編としてまずは法律から。

 

道路に関する法律はめちゃくちゃ多い。そして、関連法令によって「道路」に関する定義も異なる。

 

基本的には「道路法」でその内容が規定されているものの、「建築基準法」上の道路、「都市計画法」上の道路、「道路交通法」上の道路、「港湾法」上の道路などが混在し、それぞれ微妙に定義が異なったりする。

 

例えば、道路の種類。

 

道路法での道路種別は次の4つのみ。

 

高速自動車国道」・「一般国道」・「都道府県道」・「市町村道

 

農道や林道、臨港道路などはこれらのどれにも該当しないため道路法上の道路ではないのだけど、例えば自動車で農道を時速200kmで爆走した場合、速度違反で警察のお縄となることは誰の目から見ても明らかである。

 

スピード違反の根拠法令はあくまでも「道路交通法」。道路交通法上の道路は「道路法上の道路」+「一般交通の用に供するその他の場所」と定義されており、裾野はかなり広い。

 

こんな感じで、各々の法律で定める守備範囲が異なる。それぞれが実務的な観点から見ても合理的に抜け目なくカバーし合いながら成り立っているものの、法の抜け穴というものは必ず存在するもので、かなりグレーな事例も多々あったりする。

 

道路はどうやって作られるのか?

前置きが長くなったが、道路整備の優先順位について。

 

マクロ的な視点に立つと、国幹軸となるのは、道路法上の高速自動車国道一般国道。これらの大規模道路は国策で整備される。

 

主要地域をワンストップで結ぶ高速自動車国道一般国道(特に国土交通省直轄の指定区間)は、あらゆる人と物を運ぶ日本の大動脈と言える。ここ最近、「ストック効果」という言葉をよく聞くが、これらの道路が新設されることによる経済効果は計り知れない。

 

東京湾アクアライン一般国道有料区間)などが分かりやすいだろうか。あの路線が新設されたことで、横浜〜千葉横断にかかる移動時間が劇的に短縮され、関東圏の物流機能強化に繋がったことは言うまでもない。

圏央道、外環、中央環状の3環状とそれを蜘蛛の巣のように放射状に結ぶ高速道路網も同様に国の発展に寄与する重要な路線であり、現在ミッシングリンク(環状が途切れてる部分)の整備が急ピッチで進めてられている。

 

こんな感じで、骨格となる道路網が最優先で整備され、国土の軸が形成されていく。

 

都道府県レベルでは?都市計画の重要性

よくわかる都市計画法(改訂版)

よくわかる都市計画法(改訂版)

 

では、少しスケールを落として地域別の道路の作り方について。

 

地方の道路整備で切っても切り離せないのが「都市計画」。「都市計画法」という法の下において、地域地区や都市計画道路など、都市の基盤全てを決定付けているのが「都市計画」。

 

そのエリアをどんな地区にするのか、用途地域が決まり、それに伴い必要な容量の道路が計画される。

 

それらの道路は「都市計画道路」と呼ばれ、都市計画法に基く法的拘束力を持つ。現代日本で新設される幹線道路はそのほとんどが都市計画道路と捉えても過言ではない。

 

むしろ、幹線道路を整備したいならば、計画路線を都市計画道路として決定する手続き(都市計画決定)を取る必要がある。

 

都市計画道路は古くは昭和初期に都市計画決定されたものが意外と多く、全国的に見て現状未着手の都市計画道路は長年塩漬けにされた課題路線であることが多い。

 

加えて、民主党政権時代にインフラ整備の予算が相当に減らされた影響が今も尾を引いており、国費の充当率は年々減少。道路整備を取り巻く環境は厳しくなっている。

 

また、整備済の都市計画道路であっても、想定外の交通需要があり、慢性期な渋滞が発生している路線があったりする。これらの道路については、車線増設や交差点改良、信号改良等の対策が講じられる。

 

とりあえず、地方の道路整備のキーワードは「都市計画道路」と「渋滞対策」ということだけ覚えておけばよい。

 

 

 

道路の規格はどうやって定められるのか?道路構造令 

道路構造令の解説と運用

道路構造令の解説と運用

 

整備の方針は分かったが、具体的にどういう基準に基づいて道路は作られるのか。

 

道路の構造は、道路法下の政令「道路構造令」によって定められている。道路構造令での道路種別は、都市部か地方部か?高速か下道か?で1種〜4種に大別され、さらにそれぞれの種は通過交通量により1級〜4級に細分化されている。

 

つまり、地域性と自動車交通量によりほぼ自動的に道路幅(道路幅員)や車線数、交差点形状、設計速度等の条件が決定する。それに基づき、平面形状、縦断形状、横断形状が決定され(これを道路設計という)、道路用地を取得した後、道路工事に着手する。

 

道路工事が終わり、通常使用できる状態になればその道路はやがて「供用」され、一般に利用されるようになるのだ。

 

無料の高速道路?高速道路ではない有料道路?無料と有料の違い

ここで、豆知識。

 

高速道路を走っていると、いつの間にか「〜有料道路」に接続していることがある。高速道路と有料道路は何が違うのか?疑問に思った方も多いのではないだろうか。

 

まず、結論からいうと、有料・無料かは、道路の種別に全く関係ない。有料か無料かは、整備手法の違いでしかないのだ。

 

・税金を投入して作った道路は無料

・借り入れして作った道路は有料

これだけ。

 

だから、「高速自動車国道」であっても税金で作った場合は無料になるし、逆に、「一般国道」や「都道府県道」であっても、高速道路会社や地方道路公社が借入金によって作った場合は有料となる。これが俗に言う「高速ではない有料道路」。

 

ちなみに、有料道路の場合でも、初期費用を全額返済し終わると、その後は無料となる。道路には「無料公開の原則」という前提があり、誰でもいつでも使えることが基本なので、有料の道路はあくまで例外というわけ。維持管理有料道路制度といった一部の特別制度があるものの、日本の道路は将来全て無料になる。なお、本当に無料にすると色々やばいので、現在進行形で専門家による議論がなされている。

 

結局、「高速自動車国道」と一般国道都道府県道の「有料道路」は何が違うのだろうか。

 

実は速度制限くらいしか明確な違いはない。

 

高速自動車国道は最高速度(100km/h)と最低速度(60km/h)が定義されている。一方で、有料道路はたまたま借入金で作られただけの道路なので、速度制限は無料の一般道路のそれと同じである。つまり最低速度の定めがなく、最高速度は60km/hまでである。80km/hの有料道路などは特別措置であり、標識に最高速度を明記することで認められている。ドライバー的にはどちらも変わりないので混同されやすいが、こういう切り分けになっている。

 

ちなみに、自動車専用道路も同じようなもの。交通が著しく錯綜する場合に限って、有料か無料かに関わらず、自動車しか通れない自動車専用道路を指定することができる。

 

さいごに

冒頭の交通量が多いのに車線数が少なく慢性的な渋滞が発生している道路は、都市計画道路として未着手の路線か、決定時に当初予想していなかったほどに交通量が増加した路線のどちらか。後者であれば、計画者の力不足だ。

 

逆に、自転車レーンやバリアフリー化された歩道が設置された高質な道路は市街地を中心に見られる。自治体の生存戦略として都心部を魅力的な都市空間に再編するため、中心地の道路に先進的なアイデアが導入されやすいのだ。

 

結局、どの道路をどんな感じで整備していくかは、税金を握る公的機関が一元的に決定している。旧態依然とした体質のため、道路事業に対して不信感を抱く人もいるかもしれないが、インフラ整備は地域の雰囲気を再編するし、何より公共事業は雇用を生む。

 

税金の無駄遣いがあってはならないが、道路の整備は日本の都市を魅力的にする一つの手段であると捉えてほしい。